恩田陸著
                『夜のピクニック』



                    2014-02-25



  (作品は、恩田陸著 『夜のピクニック』    新潮社による。)

             

 初出 「小説新潮」2002年11月号〜2004年5月号(隔月連載)
 本書 2004年(平成16年)7月刊行。

 恩田陸:(本書より)
 1964年、宮城県生まれ。早稲田大学卒。92年、日本ファンタジーノベル大賞の最終候補作となった「六番目の小夜子」でデビュー。活字でこんなことが出来るのか、という驚きと感動を提供して注目を浴びる。ホラー、SF、ミステリなど、既存の枠にとらわれない、独自の作品世界で沢山のファンを持つ。著書に、「球形の季節」「三月は深き紅の淵を」「光の帝国 常野物語」「図書室の海」「禁じられた楽園」「Q&A」などがある。

主な登場人物:

西脇融(とおる)
父親 恒
(わたる)
母親

ガッチリしていてルックスも悪くない。思いの外女の子に人気がある。3年7組で甲田貴子と同じクラスに。
父親は浮気して甲田聡子の間に子(貴子)をなす。貴子が高校に入学する時亡くなる。

戸田忍 西脇融の親友。怜悧な顔つき、そっけない、クールな人間に見える。いつも静で落ち着いている。男の子たちには意外と好かれているし存在感もある。

甲田貴子
母親 聡子
(さとこ)

根っからの軟派な文化系を自認。面倒くさいことが嫌い、身体を動かすことも。妙に構わないおっとりとした所がある1,2年は別のクラスだったが、3年で西脇融と同じクラスに。
母親は20代前半に結婚、離婚して夫と共同経営していた商事会社を一手に引き受けそこそこ成功。

遊佐美和子 3年3組、甲田貴子の親友。草食動物に似た大和撫子。和風の美人、成績優秀、老舗の和菓子屋の娘。

榊杏奈
(さかきあんな)
弟 順弥

甲田貴子の親友。帰国子女、去年歩行祭に参加するも、この春両親とアメリカへ。
弟の順弥の性格は杏奈と正反対でアメリカ風。

北高3年の生徒達

・後藤梨香 甲田貴子と仲良し、毒舌女。意外に周りに気を遣う子。
・梶谷千秋 甲田貴子と仲良し。慶応文学部を目指している。
・古川悦子 正義感強く、従姉妹を妊娠させた本人を歩行祭中で捜すと。
・内堀亮子(りょうこ) 3年3組、西脇融に思いを寄せている。
・芳岡裕一 3年9組、学究肌。貴子が付き合っているらしい。
・高見光一郎 ゾンビ。夜になると元気に活動し出す。いい性格をしていると評せられる働きをする。

補足1 北高では年行事として歩行祭を行う。朝の8時に出て翌朝の8時まで。80キロを前半は団体歩行(クラス単位)、2時間の仮眠を取って後半は自由歩行で誰と一緒に歩いても良い。時間内にゴールを目指す。

補足2 西脇融の父親は甲田聡子と浮気をし、甲田貴子をもうける。融は貴子に対しこそこそすべきなのに、好き勝手にのびのび暮らしているように見えて憎んでいる。
親友の戸田忍にも貴子が異母兄妹と言うことは秘密にしている。

物語の概要:(図書館の紹介文より)

夜を徹して80キロを歩き通すという、高校生活最後の一大イベント「歩行祭」。そのイベントに賭けた一つの願い。あの一晩の出来事は紛れもない「奇跡」だった。ノスタルジーの魔術師が贈る、永遠普遍の青春小説。

読後感:

 この作品を読んでいると昔中学時代に学校行事10キロ(だったか)の校内マラソンで1年生から3年生まで3回の行事で一生懸命学校の外を苦しみながらも走ったことを思い出す。
 この作品の北高鍛錬歩行祭で80キロを走ったり、歩いたりする間、体長の変化も加わりながら、様々なことを考え、友達同士での話に、自分のことであったり、友達のことであったり、誰が好きとか嫌いとか、誰それと誰某が付き合ってるとか色んなことが起こる。
 
 そんな時間を過ごしていくと最終ゴールにたどり着く頃には苦しかったことが思い返せばとてつもなく懐かしかったり、楽しかった想い出として胸に刻まれていることを味わっている。
 それは多感な時期に、高校生活の最後を飾るに相応しいことだろうなあとうらやましく思ったり、興味も深かった。

 作品中では、異母兄妹でありながら、相手のことを憎んだり、憎まれているだろうと思って素直にお互い話し合うこともなかったのが、親友や友達、周囲の計らいや友情で意趣を通じ合えるまでになる過程が歩行祭の中で展開されていく。
 まさに青春のなせる所である。
 読み終わってさわやかな気分に満たされた。

  
余談:
 

 友達、とりわけ親友の存在は高校時代(中学時代もあるかな)に築かれたらそれは生涯に亘って続く可能性が大きい。大学でも部活動なんかがあれは有るだろうが、社会に出てからは親友というのはなかなか出来るものではない。ましてや勤務先が同じなんかでは難しい。遠く離れてしまえばこれも続くことは難しいし、生活環境の変化、結婚後のこともあるし。この作品に出てくる忍と融、貴子と美和子、杏奈の親友ぶりは理想的というか。
 背景画は、本書の内表紙に作品中の挿絵を一部追加して。