恩田陸 『Q&A 』



              2021-03-25


(作品は、恩田陸著 『Q&A』        幻冬舎文庫による。)
                  
          

 初出 2004年6月 光文社より刊行。
 本書 2007年(平成19年)4月刊行。

 恩田陸
(おんだ・りく)(本書より)  

 1964年宮城県生まれ。92年「六番目の小夜子」でデビュー。2005年「夜のピクニック」で吉川英治文学新人賞、06年「ユージニア」で日本推理作家協会賞、07年「中庭の出来事」で山本周五郎賞受賞。主な作品に「球形の季節」「三月は深き紅の淵を」「光の帝国」「ライオンハート」がある。  

主な登場人物:

<質問の相手> 調査員が聞き取る相手とのやりとり。
笠原久芳 38歳 東都日報東京本社編集局社会部記者。

外岡淑子 41歳
(とのおか)

都内の商社で事務。
内田修造 71歳 以前精密機械メーカーきんむの技術者。
田中徹也 39歳 Mの顧問弁護士。
<その他のやりとり>
売れっ子脚本家、放送作家 もう一人は学生時代の仲間とのやり取り。
AとB 「心のサロン」の女性Aと彼女を取材する女性Bのやりとり。
消防士 Mの消火活動に臨んだ消防士とカウセリングの先生とのやりとり。
サークル活動の学生 マスコミの人間が聞く。
タクシー運転手 客とのやりとり。
ふたりの遺族 あれから2年、Mの跡地に立てられた複合型のショッピングセンターを前にしてのやり取り。
軌跡の女の子 あたしはあなたなのと言う女性とのやりとり。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 都下郊外の大型商業施設において重大事故が発生。多数の被害者、目撃者が召還されるが、ことごとく食い違う証言。そもそも本当に事故なのか?Q&Aだけで進行する著者の真骨頂。

読後感:

 2月11日午後、旭が丘ニュータウンのMショッピングセンターで起きた多くの死者を出した事故(?)について、その原因が判らない状態で様々な噂がある。
 本作品はその時遭遇した人、周囲の人などに、事件の全体像を掴もうとインタビューをしたときのQ&Aを紡いで展開する、今まであまり経験したことのないストーリー作品であることが驚き。

 前半はこの事件の全体像を掴むことで犯人捜しはこの調査の優先順位は低いとして、1階から4階でのその時起きていた状況がやり取りの中で判ってくる。後半になってくると少し様子が変わってくる。加害者は国に守られるのに、被害者は戦わねばならないとか、消防士の男性の経験したことによるPTSDの結果とんでもない結果が。
 タクシー運転手がこの事件の元調査員で、退職してタクシー運転手をやりながら、政府陰謀説を吹聴していたりと。

 時代は変わり、事故の跡地に新しく立った新しい複合型ショッピングセンターを前に、タクシー運転手の友人とMの近くのマンションに住む人がその様子を眺めながら宗教団体の行動を眺めてのやり取り。
 軌跡の子として生き残った女の子を教祖として、その宗教団体が内部分裂を起こそうとしている。

 一体この作品は何なんだろうと思ってしまう。
 解説(森川嘉一郎 建築学者)を拠り所にしようとしたら、内容はショッピングセンターを舞台にしたサスペンスは、ジョージ・A・ロメロ監督の「ゾンビ」を古典原典として、これまで小説からテレビゲームまで、様々なオマージュや派生作品が生まれている。というくだりからフィクションが現実を模倣するのではなく、現実がフィクションを模倣する時代である。「ハルマゲドン願望」とかオウム真理教、「宇宙戦艦ヤマト
」「機動戦士ガンダム」「北斗の拳」「AKIRA」、さらに宮崎駿の「風の谷のナウシカ」にいたるまで、幅広く見受けられる構造だった云々と続く。
 この解説、よくわからなくて脱帽。


余談:

 恩田陸という作家の来歴を見ると多作することで作家としての力を鍛えようと年間300冊の読書量をこなしたという。そして量を伴ってこその才能だと信じているらしい。できあがった作品も平均点を維持、縮小再生産にならないようなるべく違うものを書こうと意識しているそうだ。
 なるほどそんなことからの「Q&A」なのか。

背景画は、自然いっぱいの素材集がErrorとなって消失してしまったので、背景素材無料のものからに。

           
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