荻原浩 『ストロベリーライフ』



              2021-01-25


(作品は、荻原浩著 『ストロベリーライフ』      毎日新聞出版による。)
                  
          

 初出 毎日新聞「日曜くらぶ」2015年1月11日〜2016年2月28日
 本書 2016年(平成28年)9月刊行。

 荻原浩:
(本書より)  

 1956年、埼玉県生まれ。97年「オロロ畑でつかまえて」で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。2005年「明日の記憶」で山本周五郎賞、14年「二千七百の夏と冬」で山田風太郎賞、16年「海の見える理髪店」で直木賞を受賞。近著に「家族写真」「冷蔵庫を抱きしめて」「金魚姫」「キブ・ミー・チャンス」などがある。 

主な登場人物:

望月恵介(36歳)
妻 美月
 (旧姓 藤本)
息子 銀河

1年勤めた広告代理店を辞め、独立して望月デザイン事務所を営む。フリーになって2年。仕事はじり貧状態。東京在住。
・美月 家計を助けるためパート勤務。結婚する前は手専門のパーツモデルさん。
・銀河 幼稚園児、5歳。アトピー持ち。誠子の娘陽菜は苦手。

[望月家]の人々

父親 喜一(70歳)
母親 房代(67歳)
祖母 絹江(93歳)

実家は静岡(富士山の麓)で農業を営む。一昨年から苺の品種“紅ほっぺ”を土耕栽培で作り始める。
父親 脳梗塞で倒れ入院。300坪のハウス2棟を持つ。
母親 67歳。腰痛持ち。

長女 剛子(たかこ)
(44歳)
夫 佐野和彦
息子 大輝

長女だけあって放つ言葉は厳しい。
・夫 地元の信用金庫勤務。

次女 進子(しんこ)

富士山麓の小さな町でガラス工芸の工房建て一人暮らし。
恵介が唯一まともに付き合いあり。

三女 誠子(せいこ)
夫 雅也
(まさや)
娘 陽菜
(ひな)

名古屋在住。皮肉っぽい。
・雅也 名古屋でIT関係の会社経営。2つ年下。
 夫婦仲は破壊寸前危ない状態。
・陽菜 7歳。性格は母親似。

長男 恵介 四人きょうだいの末っ子。2年前正月に帰省してからは実家に戻らずの状態。農業は嫌い、デザイン事務所を続けたいと思っている。

菅原豪
(すがわら・つよし)
<通称 ガス>

菅原農場の副社長。高設栽培で苺の“章姫(あきひめ)”を生産。
恵介とは中学2年同級生。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 イチゴ農家を継げと迫る母親。猛反対の妻。志半ばのデザイナーの仕事はどうする。夢を諦めるか、実家を捨てるか。恵介36歳、今、人生の岐路に立つ…。明日への元気がわいてくる、直木賞作家の人生応援小説。

読後感:

 美大を東京でデザイナー事務所を始めた恵介ではあるが、仕事は尻すぼみ。妻の美月は生活のため生活雑貨のスーパーと、昔取った杵柄、手のパーツモデルをする。
 そんな中、静岡の実家の農家では苺作りが軌道に乗り始めるも、父親の喜一が脳梗塞で緊急入院、命は取り留めリハビリに励むも、言葉の障害が伴う。

 望月家でただ一人の男である恵介は、母親の腰痛を押しての作業振りを見るに付け、父親復帰の目処が付くまでと苺作りを手伝うことに。
 中学時代の菅原豪に教えを請いながら、デザイナーの仕事も細々ながら続けながら父親の残したノートを頼りに苺作りにのめり込んでいく。

 一方、美月と銀河との家庭の問題がやはり出てくる。恵介は次第に自然の中でのありのままの中に喜びを見出し、銀河にもその喜びを味わわせたくなる。
 美月に対しては、美月の考えを尊重しつつ、美月が静岡の家庭では、三姉妹の存在のなか居る場所が無いことは明白。美月は美月で次第に恵介が離れていくことに慣れと、自身の希望を通そうとするも、銀河が次第に田舎の生活に喜びを見出していく姿に、気持ちが揺れていく。
 果たしてこの夫婦の行く末に希望が訪れるのか。

 はたまた、三姉妹の誠子と雅也の壊れそうな家庭は?はたまた恵介が苺農家の将来を見越して、事業を発展させようとの計画に、剛子の夫佐野さんが力を発揮したり、恵介のデザイナーとしての才能が生きてきたりと、ハートフルな結末が待っていそうな流れに、恵介、美月、銀河の家庭もいい方向に向かっていきそうな・・・


余談:

 作品の中身では、苺栽培についての色んな情報が含まれているのも参考になる。
 苺の出荷は完熟になる前の状態で出荷するため、本来の苺の甘さはやっぱりもぎたてでないと味わえないということ。
 子供の頃、トマトにしろ、キュウリにしろ、小さい畑ながらも、畑で取って食べたときの味は、その頃の方が上手かったなあと思い出す。
 

背景画は、自然いっぱいの素材集がErrorとなって消失してしまったので、背景素材無料のものからに。

           
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