荻原浩著 『神様からひと言』








              2018-09-25


(作品は、荻原浩著 『神様からひと言』    光文社による。)
          
  
初出 2002年10月 光文社刊。
 
 本書 2005年(平成17年)3月刊行。

 荻原浩:
(本書より)
 
 1956年埼玉県生まれ。1997年「オロロ畑でつかまえて」で小説すばる新人賞を受賞。2005年には「明日の記憶」で山本周五郎賞を受賞した。著書に「さよなら、そしてこんにちは」「サニーサイドエッグ」「千年樹」「四度目の氷河期」「押入れのちよ」「あの日にドライブ」などがある。   

主な登場人物:

<珠川食品>のメンバー
佐倉凉平(27歳) 大手広告代理店を辞め、この会社に入社して4ヶ月。新製品決済会議で末松課長とバトル、会議はめちゃくちゃ、お客様相談室に左遷される。
お客様相談室のメンバー

リストラ要員の強制収容所「お客様相談室」
・本間室長 営業一課から移って未だ1年も経たず。40代後半。
・篠崎薫主任 えらの張った四角い顔、競艇好きのいい加減さとベテランの技持ち。
・羽沢(額縁眼鏡)未だ新入社員。珠川食品に対するクレームや誹謗中傷の監視が役目。
・山内和則 新人が担当の業務日誌作成。
・神保(強面)うちの剣道部のエース。ストレスからくる失語症。
・佐倉凉平 販売促進課から飛ばされての新入り。
・宍戸由里 凉平の後に移ってきた元社長秘書、美人。

珠川食品のメンメン

・珠川政彰副社長 この春営業企画部長から二段飛びで就任。アメリカで経営学士号をとっている。
・溝口専務 町工場時代からの生き残り。
・秋津商品開発部長
・佐藤研究開発部長補佐。
・末松販売促進課課長。凉平の上司だった。
・星購買部長 溝口の飼い犬。
・村島 新設のマーケティング室長。凉平より5,6歳上。
・先代社長 玉川政次 珠川食品の創業者。
・二代目現社長 玉川和雄 元銀行マン、娘婿。

経理課 凉平と同じこの春途中採用の3つ年上、妻子持ち。凉平にとって社内で唯一親しい友達。
宮野リンコ(29歳)

4年前唐突に凉平のアパートに転がり込むも、半年前怒って出て行く。
携帯を持たない天然記念物。凉平らのアマチュアバンドのボーカルでは人気、ソロデビュー後事務所と合わずやめる。

明石町 クレーム電話の常連。先代玉川政次社長の妾。珠川食品の筆頭株主、5分の1を持つ。元芸者。
光沢

新宿のラーメン専門店「げんこつ亭」の店主。
副社長の日アイデアでラーメン店とタイアップして名店の味を再現目指す相手。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 佐倉凉平、28歳、サラリーマン。坊ちゃん風の外見に似合わず喧嘩っ早い。そんな彼が総務部お客様相談室へ異動。源氏鶏太以来絶えて久しい「サラリーマン小説」の現代版。痛快、切なさ、著者の最高傑作。      

読後感:

 主人公佐倉凉平(27歳)は大手広告代理店を首になり、珠川食品に中途採用され、配属された販売促進課で臨んだ新製品決済会議、副社長に広告宣伝のスペシャリストと期待されての会議での副社長の独演会、上司の末松課長と涼平のバトルに会議はハチヤメチャ。お客様相談係に左遷される。

 さて、お客様相談係での人物がまた曲者揃い。本間室長は自分じゃ苦情電話に出ない、篠崎主任はプロらしく対処できるが、競艇狂い。他の部員も問題人間ばっかり。
 そんな中、OJTで篠崎のアドバイスを受けながらも次第に要領を掴み、成長していく姿はサラリーマンの痛快小説である。

 クレーマーに対する真摯な態度、ものの本筋を極めようとする姿勢、人間性を示しての対応にほんわか気分に浸されてくる。
 副社長の一見物わかりの良さそうだった印象も次第に真の姿が現れてくるとラストのとんでもないシーンへと。
 ユーモアあり、ホロッとするところあり、痛快な場面ありと何とも楽しくも元気の出てくる作品である。
 
余談:

 荻原浩の作品では「明日の記憶」が印象深いが、解説(藤田香織)を読むと本作品は新人の頃の作品であるが、次第にユーモア作家からそれ以上に強く輝いているのは「希望」と。
 やはり作家の作品をずっと読むことでその作家の成長ぶりを認めるのも読書の喜びかも。
  

背景画は、森・木をテーマに。(自然いっぱいの素材集より)

           
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