1973年生まれ。2008年「食堂かたつむり」でデビュー。多くの作品が、英語、韓国語、フランス語、スペイン語、イタリア語などに翻訳され、様々な国で出版されている。「食堂かたつむり」は、2010年に映画化され、2011年にイタリアのバンカレッラ賞、2013年にフランスのウジェニー・ブラジェ賞を受賞。2012年には「つるかめ助産院」が、2017年には「ツバキ文具店」がNHKでテレビドラマ化され、「ツバキ文具店」「キラキラ共和国」「ライオンのおやつ」は、「本屋大賞」にノミネートされた。その他の著書に「喋々喃々」「ファミリーツリー」「リボン」「あつあつを召し上がれ」「サーカスの夜に」「ミ・ト・ン」など。　

主な登場人物：

物語の概要：（図書館の紹介記事より。）

　帰って来ない母を待ち、「とわ」は一人で生き延びる。歌う鳥たち。草木の香り、庭に降りそそぐ陽射し。虹のように現れる、ささやかな七色の喜び。ちっぽけな私にも、未来はあるのだ。過酷な人生を生き抜く物語。

読後感：

　最初の章（？　実際は章とか節の作品の仲ではなされていない）では、視覚障害の幼い子とその母親の慎ましやかな生活ぶりが描かれていて、しかし“とわ”が大きくなったらどうするんだろうか？とか、この親子の生活はどうやって生計を立てているのだろうかと思いながら読んでいた。
　母親の愛情をいっぱいに受けた“とわ”は、母親の話す物語によって世界を広げげているも、母親がお金のために働きに出る頃から母親の様子に変化が。
　ただ十歳の誕生日祝いで母親と初めて外の世界に出る経験をする。

　母親が仕事に出かけるようになると、一人で過ごすことが多くなり、静けさに不安が襲ってくる。そんな時は、ローズマリーというお友達と過ごし、とわの庭の木々たちとの会話に季節の変化を感じることに。
　母親が帰ってこなくなるに及び、次の章から思いもかけない現実に降りかかってくることに。

　最初の章で感じていた時に抱いていた感傷は、次の章からは裏切られることになる。
　現実のことが次々に“とわ”に襲ってくる。
　母親が帰ってこなくなり、“とわ”は空腹に陥ったり、部屋にはゴミがたまり、悪臭が漂いとか・・・。
　そして外に出て行かざるを得ず、現実の問題が一挙に吹き出す。

　読みながら、視覚障害を持ち、世の中から隔離されていて、初めて外の世界に放り出された
“とわ”が経験する出来事は想像に絶するものだろうと想像させられる。
　“とわ”が生まれて育ってきた状況を知ることで、最初の章の甘い感傷は吹っ飛んでしまった。
　母親の事情、“とわ”の事情を知った時の衝撃、大人になった状態からの、これから世の中で自立していかなければならないことを考えたらどんなに不安があっただろうか。

　でも、後半、“とわ”の生き方には力強いものを感じ、スズちゃんとの会話に笑っちゃうことも。
　読み終えた後、斉藤和義の「やさしくなりたい」のメロディと歌詞を、独りでに口ずさんでいた。