主な登場人物:
(高橋)泉
(カカ)
息子 草介
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家事以外にも草介のぜんそくの看病等で育児ノイローゼになり、夫が出ていき、新しく人生をやり直したかった泉。ホームで思い詰めている風の女学生を見初め・・・。
・草介 手際よく、彼の優しさに泉たちは助けられる。
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(島原)千代子
(ママ、チョコ)
娘 宝
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島原病院のお嬢さん。オーストラリアに留学中自分がレズビアンであることに気付く。泉(35歳)と知り合い(千代子19歳の時)、街を出(駆け落ち)マチュピチュ村に4人で暮らすことに。“タカシマ”家と称する。
・宝 泉と千代子が街を出るときはお腹の中。宝の登場はあまりに強烈で、謎だらけの宇宙人。
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ボス |
マチュピチュ村の集落をまとめるリーダー的存在。
最初“タカシマ”家に嫌がらせをするが・・・。
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ガソリンスタンドの社長夫妻 |
泉たちのことを理解し、ガソリンスタンドで働かせてくれる。 |
物語の概要: 図書館の紹介より
ふたりの母親とふたりの子ども。偶然の出会いからはじまった“タカシマ家”。特別なようでいて、どこにでもいる一家が歩んだ16年間の軌跡…。喜びと悲しみに彩られた、新しい家族小説の誕生。
読後感:
扱っているのがレズビアンの二人とその子供達という構成に少々戸惑う。各章の語りはそれぞれ母である泉、ママである千代子、泉の息子草介そしてママの娘である宝という女の子の四人がそれぞれの立場で展開する。
ふと泉の立場と千代子の立場で受ける印象が、また草介の側から見た家族のこと、宝から見た家族のことが読者に違った印象で感じられてさてどれが実像なのだろうかと思ってみたりする。
とはいえ、草介の優しさと周りを見て先回りしてカバーに廻る姿、気を遣いすぎて自分の悩みを外に出すことなくうちに秘めてついには躓くことになる人生。
宝の自由奔放に生きているようでママがいなくなってあの時にママが自分の先のことを考えて行動していたことを思う心根。カカとママの行為はちょっと近寄りがたいので子供達のことが気になってしまったのかも知れない。
でも世の中には色んな人がいてそれが幅広い世界を形作っていることであることを理解しあうことの大切さを思い起こさせている。
印象に残る表現:
カカ(泉)が私(宝)ニーニー(草介)のことについて語る場面
「人って、生まれてくるときに、同じ量の粘土を与えられているんじゃないかと思うんだ」
・・・
「はじめはさ、丸い粘土の固まりに、親指を突っ込んだだけの、原始的な小さな器なんだけど、それが成長するにつれて、一回り大きなぐい飲みくらいの器になって、更にもっと大きな湯飲み茶わんになったりする。人によっては、平べったい皿だったり、汁物を入れられる深めの鉢だったり、いろいろなの。・・・」
・・・
「草介の場合は、確実に大きな器だったと思う。小さな物でも大きな物でも、硬い物でも柔らかい物でも、何でも載せられる便利な器。でも、その分脆くて、壊れやすくなっていたのよね。草介の心は、あまりにもたくさんの物を受け入れてしまったから」
カカの声は、それでも穏やかだった。
「ニーニー、優しかったもんね」
たったそれっぽっちの言葉を伝えただけなのに、元気な頃のニーニーを思い出して、視界が涙の向こうに霞んでしまった。
「でも、優しすぎたのかもしれないね」
カカの声がする。こうなったらもう、とことんニーニーのことを話したかった。
「今から思うと、草介には反抗期がなかったのよ。それを、おチョコちゃんと、育てやすい子だとか優しい子だってさんざん褒めていたんだけど、実は、そうじゃなかったんじゃないかなぁ、って最近思うの。宝みたいに、ぱーっと、不満をぶちまけて暴れてくれた方が、よっぽどありがたいのよね、本当は」
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