物語の概要: 図書館の紹介より
宿した命を喪った夫婦。思春期の闇にとらわれた少年。愛猫の最期を見守る老人。ままならぬ人生の途に「奇跡」は訪れた…。1匹の猫の圧倒的存在感が物語を貫く。濃密な文体で人間の心の襞に分け入る傑作長編。
主な登場人物:
第一部 |
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妻 信枝
夫 籐治
浩市
アリヤマアヤメ
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信枝40歳、宿していた赤ん坊を世に出すことなく亡くす。
捨て猫を何度も捨てるも戻ってきたり、捨てきれずに探しに行く。赤ん坊の姿と交差して育てようと。
籐治は雇われ大工、52歳。
浩市は同じ職場の大工。同じ職場のマナミと結婚したばかり、籐治の家に将棋家に打ちによく来ている。
アリヤマアヤメは捨て猫(モン)の張本人。信枝の家に猫を見に来る。
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第二部 |
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父親
子 行雄
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行雄は父(32歳)と子(13歳)の父子家庭。父親は母親に逃げられ、頭は小説家になりたい夢を持つ。
行雄は不登校状態になり、ポケットにサバイバルナイフを忍ばせ、チビを刺そうと。少年の心の闇とモンの行為が・・。
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第三部 |
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籐治
若い獣医
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妻の信枝も7年前に逝き、籐治も猫のモンも年を取ってい行く。モンの老いていく姿を通し籐治の、死への恐れも次第に溶けてゆく。
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読後感:
第一部を読んでこういう猫にまつわる題材が小説になるんだなあと感心。 読んでいると本当に登場人物の感じたり、思ったりしていることがつぶさに表現されていて身近かに起きていることのように感じる。 ついついのめり込んでしまった。 この感情はどうしたものか、著者の表現力、感性がいかに素晴らしいものかと感じ入ってしまった。
第二部になるとそれが受け入れがたいものになってちょっと違和感を覚える。
一応猫と有山アヤメが仲介することで連続した物語になっていることが判った。
子猫のペンギンの死骸を有山アヤメが連れているモンちゃんという赤トラ猫に「食べられてるかも知れない」「あの子はモンちゃんに食われてモンちゃんになったと、思ったらええやん、な」と言われ泣きたくなってしまった行雄。 少年の気持ちがゆらぐ。
第三部、信枝が逝き、主人公が夫の籐治となり、老いてゆくモンという猫の最後を見とる詳細描写を通して猫という動物とはいえ、人間の生き方にもあてはまる情、思いやり、やさしさ、いとおしさといったものがない交ぜて伝わってくる優れものである。
印象に残る表現:
第一部 夫の籐治が妻の信枝に対して女の子を捜しに行って子猫を持ち帰ってきて言う言葉。
「飼ってやったらどうだ」
言葉が出なかった。 夫を見、 猫を見、 それからまた夫を見つめた。
「こいつだって、きっと生きていたいんだ」
「だって、・・・ この子猫、 どうしても・・・」 「それでいいじゃないか。 どっちにしろ、 俺たち夫婦は死ぬまで何遍でも亡くしたこの子とのことを思い出すんだ。 子猫が赤ん坊に見えたって、 ちっともかまわんじゃないか。 しっかり生きて色々なものを見るたびに、 何遍も何遍も思い出してやろう」
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