貫井徳郎著 『我が心の底の光』




              2018-07-25


(作品は、貫井徳郎著 『我が心の底の光』    双葉社による。)

          

 
 初出 「小説推理」2014年1月号〜2014年9月号。
   本書 2015年(平成27年)1月刊行。 

 貫井徳郎:
(本書より)
 
 1968年東京生まれ。早稲田大学商学部卒業。93年、第4回鮎川哲也賞で最終候補作となった「慟哭」でデビュー。2010年「乱反射」で第63回日本推理作家協会賞、「後悔と真実の色」で第23回山本周五郎賞を受賞。「神のふたつの貌」「追憶のかけら」「空白の叫び」「夜想」「明日の空」「灰色の虹」「新月譚」「微笑む人」「ドミノ倒し」「北天の馬たち」「私に似た人」、そして2014年10月から文庫新装版が連続刊行された「失踪症候群」「誘拐症候群」「殺人症候群」の「症候群三部作」など著書多数。 

主な登場人物:

峰岸晄(こう)
<主人公>
母親
父親

口数の少ない目立たない。5歳の時伯母に引き取られるも厄介者扱い。小さい時死の淵から生還。
・父親は一時は不動産投資で大もうけ、容姿に優れ顔立ちも。金払いいい。
・母親 埼玉の田舎生まれ、都会の華やかさに憧れ21歳の時六本木でホステス時父親と出会い、結婚。晄を産む。

慎司
父親(伯父)
母親(伯母)

晄の従兄弟。お坊ちゃん。幼い頃から木下怜菜を思い続けている。
・伯父 晄の母親の兄。晄の血縁者だがある事件以後晄を恐れる。

木下怜菜 晄の幼なじみ。態度はいつも潔く、学校内でひとり晄に話しかけてくる。
<2001年 14歳> 晄は小学生。
中学生三人組

・口髭 木下怜菜に目を付け、晄に万引きを要求してくる。
・怒り肩
・腰巾着

<2003年 16歳> 晄、高校生になる。
高校生女子三人組

・倉石莉音(りおん) 父親はパチンコ店経営で裕福。田岡の純情を弄んで笑う。いい根性の持ち主。
・田中静江 静江と笑菜は莉音の取り巻き。
・大橋笑奈
(えみな)細見だが高校生らしい。

田岡

引っ込み思案で、晄と同じく空気のような存在。唯一晄に話しかけてくる。
大橋笑奈に好意を寄せている。

<2006年 19歳> 晄、サラ金業者に就職。
秋月 サラ金業者に就職の晄の先輩。顔は闘犬を連想させ、直接取り立てに向かうのが得意。晄は電話での取り立てを。
花岡 町工場の経営者。妻と5歳の子供有り。晄たちのサラ金から借金を取り立てられている。
<2008年 21歳> サラ金を辞めバイトや派遣などを転々。不動産取引詐欺を計画。
不動産取引詐欺の仲間

・朝永 サラ金時代に知り合った仲間。名うての詐欺師。経営コンサルタント役で雇う。
・飯倉幸代子
(さよこ) 元女優、晄の祖母役として雇う。

黒沢 中堅の不動産会社。詐欺を仕掛けられる客。
<2012年 25歳> 4年の海外逃亡から戻って来て次の仕掛けは・・・。
松田黎子(れいこ) 小料理屋<美都里>の女将、43歳。
日野颯太(そうた) 晄が雇った女の子に聞き上手、話し上手な男、25歳。
<2016年 29歳> 最後の復讐計画。

長澤俊紀
山崎

<VA>(スマートフォン用のゲームを制作する会社)の社長。
・山崎 <VA>に勤めるプログラマー。

長澤剛紀(こうき) 長澤俊紀の兄。表向きの看板は三沢商事という企業コンサル業務の会社幹部。実態は暴力団。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)
 
 母は死に、父は人殺し、そんな峰岸晄は暗い少年時代を送っていた。孤独の闇の中で、晄が向かう先は…。全編を覆う「無温の世界」。身を震わせるラストの衝撃。胸を撃ち抜く、驚愕の傑作長編。   

読後感:

 一連の峰岸晄の行動は小さい頃の悲しくもやりきれない?孤独感にさいなまれていた想いの怒りが冷酷な復讐という形で行われてきたことがラストの章で衝撃の結末として待っていた。
 それまではどうしてこんなサラ金の取り立てとか、詐欺行為とか愛人を陥れたりする行為が行われているのかなあと思っていた。

 そんな中、風向きが変わってきたかなと思われたのが、同じような生い立ちを経験してきたという日野颯太(そうた)と仕事をしている時ではなかったのか。
 日野の「晄はさ、笑わないじゃん。一目見て、「あ、こいつ、誰からも助けてもらわないで生きてきたな」と思った。それで、おれが助けてやらなきゃって気になったんだよ」と。そして仕事が終わり「これからは晄も、前向きに生きられるよな」と。でもまだ晄の考えを変えることは出来なかったようだ。

 ラストのシーン、読者もちょっと想像できなかったような結末に衝撃が・・。
  小さい頃の感謝していたことがこんなに大きかったとは・・。
  
余談:

 貫井作品、次に読む作品が見つからない時手に取ってしまう作家の一人。未だ読んでいない作品が多数あるのでまた取り上げたいと思う。

背景画は、森・木をテーマに。(自然いっぱいの素材集より)

           
戻る