物語の概要:図書館の紹介文より
若い女性を襲い、死体から人指し指を切り取る連続殺人鬼“指蒐集家”が社会を震撼させる中、捜査一課のエース・西條輝司は窮地に立たされていた…。緻密な構成で不器用に生きる男たちを活写する傑作長編。
読後感:
一見刑事小説と思いきや、猟奇な連続殺人事件で犯人を追いつめることをバックボーンにしてそれを追う刑事たちの人間がぶつかり合う群像劇と言ったところ。その中でも見栄えも良く、頭は切れるが人から嫌われている西條、その西條を露骨に嫌悪する綿引、新聞記者にたかるような村越、ムードメーカーの三井といった個性的な集まりの9係。その面々に相方となる所轄刑事らが警察組織の駒であることに対して、そして家庭の事情に対してそれぞれジレンマに陥りながら犯人に迫っていく。
格好良さとは異なる人間くささが漂う刑事物語である。殺人事件が連続することで捜査本部も3つの所轄の合同に発展、なかなか尻尾が掴めないで展開していく。
そんな中、西條の越境行為から上からの圧力がかかるのと、不倫ネタから窮地に陥り、自分がいかに警察内部で他人のことに無関心に過ごしてきたのかを気づかされる。そしてそれでも自分の味方は一体誰だったのか。ラストに向かって犯人の仕掛けた罠に西條がどう立ち向かっていくのか。なかなか興味深い展開となっていく。
|