貫井徳郎著 『後悔と真実の色』




                
2013-07-25




     (作品は、貫井徳郎著 『後悔と真実の色』    幻冬舎による。)

                 
 
 

 初出 「ポンツーン」2006年12月号から2008年6月号に連載、単行本化に当たり大幅加筆・修正したもの。
 本書 2009年(平成21年)10月刊行。

 貫井徳郎:(本書より)

  1968年東京都生まれ。早稲田大学商学部卒。93年、第4回鮎川哲也賞最終候補作となった「慟哭」が、予選委員であった北村薫氏の激賞を受けデビュー。2006年、「愚行録」で第135回直木賞候補、09年、「乱反射」で第141回直木賞候補となる。主な著作に「失踪症候群」ほか症候群シリーズ、「転生」「さよならの代わりに」「追憶のかけら」「夜想」など。
 

◇ 主な登場人物

西條輝司
(こうじ)
妻 秋穂
娘 玲衣子

9係の主任、警部補37歳。容姿に恵まれている上に頭が切れる。特捜本部では鑑取りの分担を担うことに。人に媚びず、他人の評価を気にしない。
妻の秋穂は夫に女の影を感じ取っている。名ばかりの夫婦。
・相方 大崎 牛込署の制服警官。打たれ強い。
・美叡 西條が付き合っている彼女、25歳。フリーライター。
・山根 9係の後輩、特命の三井から情報取りを頼む。大学院生のような世間知らず風の顔。

三井厚(あつし)

9係、巡査部長、30代半ば。特捜で特命を担い、ネットパトロールを分担。ムードメーカー。
・田崎 相方。牛込書巡査部長。年上。

村越孝三郎
離婚妻 清江
娘 美帆

9係、女癖の悪さで離婚、どんな嘘でもつくし口を割らせるテクを持つ。小谷という大手新聞記者と親しい。
娘(4年大学に)の養育費を督促されている。

綿引和行
母親
息子 大樹

機動捜査隊 警察官になって18年、人並み以上に誠実に職務遂行の自負。次の目標は本庁勤務。西條とは所轄にいたときの先輩。西條に対し一目見たときから不愉快な印象、犬猿の仲。
特捜本部では地取り担当。
妻と息子交通事故で妻死亡、息子(5歳)は車椅子生活。
・金森 相方(9係)。一度見た顔は忘れない特技。

本庁捜査一課

・佐竹課長 
・花山理事官
・真壁管理官
・野田係長 9係


物語の概要図書館の紹介文より

 若い女性を襲い、死体から人指し指を切り取る連続殺人鬼“指蒐集家”が社会を震撼させる中、捜査一課のエース・西條輝司は窮地に立たされていた…。緻密な構成で不器用に生きる男たちを活写する傑作長編。

読後感:

 一見刑事小説と思いきや、猟奇な連続殺人事件で犯人を追いつめることをバックボーンにしてそれを追う刑事たちの人間がぶつかり合う群像劇と言ったところ。その中でも見栄えも良く、頭は切れるが人から嫌われている西條、その西條を露骨に嫌悪する綿引、新聞記者にたかるような村越、ムードメーカーの三井といった個性的な集まりの9係。その面々に相方となる所轄刑事らが警察組織の駒であることに対して、そして家庭の事情に対してそれぞれジレンマに陥りながら犯人に迫っていく。

 格好良さとは異なる人間くささが漂う刑事物語である。殺人事件が連続することで捜査本部も3つの所轄の合同に発展、なかなか尻尾が掴めないで展開していく。

 そんな中、西條の越境行為から上からの圧力がかかるのと、不倫ネタから窮地に陥り、自分がいかに警察内部で他人のことに無関心に過ごしてきたのかを気づかされる。そしてそれでも自分の味方は一体誰だったのか。ラストに向かって犯人の仕掛けた罠に西條がどう立ち向かっていくのか。なかなか興味深い展開となっていく。
 


余談:
 TVドラマでは刑事物はなんとなく興味を持つ。単に犯人捜しでなくてもそこに人間的なものが入ると物語に厚みが増し、視聴者を惹きつける。それが日常にある出来事であればあるほど。
 小説でも恋愛小説でも普段のテーマのものでも、ミステリアスなものが含まれてくると、読者は何故か引き込まれて読んでしまう。テクニックはそんなところに隠れているのかな。

 

      背景画は、本書の内表紙を利用。

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