貫井徳郎著 『北天の馬たち』





                
2015-03-25


(作品は、貫井徳郎著 『北天の馬たち』     角川書店による。)

         
 

 初出 「小説野生時代」2012年10月号〜2013年8月号。
 本書  2013年(平成25年)10月刊行。

 貫井徳郎:(本書より)
 

 1968年東京都生まれ。93年、鮎川哲也賞の最終候補作「慟哭」でデビュー。2010年、「乱反射」で日本推理作家協会賞、「後悔と真実の屍」で山本周五郎賞を受賞。その他の著書に「失踪症候群」「天使の屍」「プリズム」「崩れる」「明日の空」「灰色の虹」「新月譚」「微笑む人」「ドミノ倒し」など多数。
主な登場人物:
 

毅志(たかし)
母親 

一般企業に勤めていたが、父親が亡くなりビル管理と店維持のため会社を辞め、横浜の馬車道界隈で母親が営む<ペガサス>という喫茶店のマスターに。無口の独身。背が高く92キロの体力に自信。2階の「S&R探偵事務所」の手伝いもやっている。
・母親 ビルの所有者、夫が亡くなる前に事務所として使っていた2階の借り手を探していて皆藤・山南に貸す。

皆藤晋
(かいどう・しん)
「S&R探偵事務所」設立の一人。武道をやっていた人特有の鍛え方の人。
山南涼平
(やまなみ)
「S&R探偵事務所」設立のもう一人。毅志の3つ年上。男性ファッションモデルとしても十分通用する容姿の持ち主。

鳴宮淑子
(なるみや)
姪 芽衣子
(6歳)

30超え、20代前半の若い容姿。皆藤・山南とは昔からの知り合いという。
・芽衣子 淑子の亡き夫(敬次)の兄(聡一)夫婦の一人娘。兄夫婦が事故でなくなり、淑子夫妻が引き取るも、夫も亡くなり淑子と共に暮らしている。

<ペガサス>のバイト

・春菜 横浜国立大2年生。バイト歴1年半。背の低さをありあまる元気で補う物怖じしないはきはきした性格。
・絵里花 春菜と違ってクール、ぶっきらぼうの働き者。

角倉康輔(こうすけ)
(28歳)

女性に暴行を働いたとして探偵事務所に復讐を依頼された相手。現在無職、独身。
橘依子(31歳) 品川の会社勤めのOL、派遣社員。目黒の高級マンション住まい。ちょつと目を引く美人で持ち物、身につけているものは高級ブランドもの。叔母が依子と住谷が結婚相手として付き合えるようにと依頼してくる。
住谷功司(32歳) 勤め先は一部上場企業。容姿端麗、頭脳優秀で真面目な人のようで結婚相手として引き合わせたいと(依子の叔母)。
当郷 伊勢佐木署の刑事。
伊丹勝悦(かつよし) 角倉康輔の兄。大柄、暴走族の総長。

物語の概要(図書館の紹介記事より)

 横浜・馬車道近くに探偵事務所を開いたふたりの男。彼らを静かに見守るひとりの女性。特別な絆で結ばれた3人には、胸に秘めた思いがあった…。作家デビュー20周年記念作品。慟哭のサスペンスミステリ。

読後感

 図書館の紹介記事では二人の探偵ともう一人の女性が主人公の風。しかし物語は毅志が主人公のようなので、もう少し進んでからでないとと。
 二人の探偵の関係は三浦しをんの「まほろ駅前多田便利軒」を読んでいるので多田啓介と行天春彦の話っぷりが頭に染み込んでいて、本作品の会話はもっとまともな感じがしてちょつと入り込みづらかった。

 最初エピソード1での片倉康輔への復讐内容、エピソード2での橘依子への扱いが関連性がなく短編ものかなと思いきや、その後角倉と橘の二人の繋がり、海藤と山南の二人の探偵と淑子・芽衣子の間での秘密が次第に明らかになるにつれ、毅志から三人のことに中心が移ってきて毅志がむしろ第三者的立場で語っているような展開になってくる。
 ちょっと今までにない展開に興味を持った。
 ラストの二人の探偵の生き様はちょつと格好良すぎるかとも。

   

余談:
 どうしてか貫井徳郎の作品での余談蘭が残ってしまう。過去に読んで作成した作品の余談蘭を見てなかなか意味深なことを書いていたなあと思う。ネットで著者のことを調べてみて思ったこと。作家の北村薫が貫井徳郎の作品を押している。北村薫作品とはちょっと作風が違うけれど、なるほどと思う点がある。
「慟哭」については「題(タイトル)は『慟哭』書き振りは≪練達≫読み終えてみれば≪仰天≫」。
「乱反射」については「『乱反射』に与えないようなら、推理作家協会賞の存在意義はない」。なぜなら『乱反射』は「小説という衣の下に、本格の鎧を隠した作品」と。 結構余談蘭は苦労することも・・・。

          背景画は横浜馬車道の風景より。

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