額賀澪 『ウズタマ』



              2022-05-25


(作品は、額賀澪著 『ウズタマ』        小学館による。)
                  
          

 
 本書 2017年(平成29年)11月刊行。書き下ろし作品。

 額賀澪
(ぬかが・みお)(本書による)

 1990年、茨城県行方郡に生まれる。日本大学芸術学部文芸学科卒業。 2015年「ヒトリコ」で第16回小学館文庫小説賞受賞、同時期に「屋上のウインドノーツ」で第22回松本清張賞を受賞。 この2作で2015年6月末同時デビューを果たし、話題に。 2015年11月刊行の「タスキメシ」は、青少年読書感想文全国コンクールの課題図書(高等学校の部)に選ばれ、ベストセラーに。その他の著書に「さよならクリームソーダ」、「君はレフティ」、「潮風エスケープ」など。

主な登場人物:

松宮周作

食品メーカー勤務、営業部からマーケッティング部に異動して半年、28才。平成元年(1989年)生まれ。
紫織との結婚を前に父が倒れ、入籍を延期している。

松宮将彦(まさひこ) 周作の父親。あと2ヶ月で60才。脳梗塞で倒れ入院中、意識が戻っていない。
松宮由美子(没) 周作の母親。周作が3歳の時亡くなる。

光森紫織
娘 真結
(まゆ)

周作の婚約者で、大学の1年先輩。先の夫とは24才で結婚、真結を産んで後、夫の暴力で離婚。
都立大学の職員。周作と再会、付き合ってもうすぐ1年半。
・真結 4才。

皆瀬悟(さとる)

当時大学生で松宮家に家事手伝いで来ていた。
松宮由美子傷害事件を起こした男。

宗像貴史
(むねかた・たかふみ)

秋学館文芸編集部、54歳。周作の大学の友人吉村の紹介で、25年前の松宮由美子傷害致死事件の様子を訊く。
当時宗像は週刊誌記者をしていた。

藍川明雄(あいかわ) 神保調古書店街にほど近い場所にあるタワーキャンパスの大学の教授。皆瀬悟が通っていた大学。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 松宮周作は、シングルマザーの紫織との結婚を前にしたある日、父親から見たこともない預金通帳を手渡される。自分の為に大金を振り込んでいた謎の人物を探し始めたことにより、父親と自分の過去がわかっていく…。青春小説の旗手が挑む、新しい家族小説。

読後感:

 主人公の松宮周作は、茨城の実家に紫織と真結を連れて、結婚をするつもりと知らせに行ったとき、父親から、320万円が預けられた周作名義の預金通帳を渡された。父親が蓄えたものでなく、少しずつ預けられたものだった。誰が何のためにの理由も聞かされず、その半月後父が倒れ、天涯孤独の身になることを予感する。

 物語は、母が居ないことの意味、この預金通帳の秘密、そしてこれから真結の父親になることが出来るのかという不安が絡み合い展開する。
 展開は現在の<2017年秋、冬>の現在と、<1992年秋、冬、1993年冬、春>の父親の将彦が生きていた過去の時点の情景を織り交ぜながら次第にラストへと進んでいく。

 母親の松宮由美子の、傷害致死事件の真相に迫る過程はミステリー性、父親となることが出来るのかという家族の問題は、まさに家族小説の神髄に迫るもので、読み応えのあるものである。


余談:

 本の題名「ウズタマ」って何だろうと思って読み終えてもこの表現は出てこなかった。
 しばらくして分かった。
 周作が、皆瀬悟の作ってくれた塩野菜ラーメンは、野菜嫌いだった周作のために、考え出されたもので、ウズラ卵が好物の周作のために、野菜の上にウズラ卵を1個のせたものを、周作がうまい、うまいと言って食べることが描写されていたところによるものと思われる。すっきりした。

背景画は、自然いっぱいの素材集がErrorとなって消失してしまったので、背景素材無料のものからに。

           
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