物語の概要:(図書館の紹介記事より。)
松宮周作は、シングルマザーの紫織との結婚を前にしたある日、父親から見たこともない預金通帳を手渡される。自分の為に大金を振り込んでいた謎の人物を探し始めたことにより、父親と自分の過去がわかっていく…。青春小説の旗手が挑む、新しい家族小説。
読後感:
主人公の松宮周作は、茨城の実家に紫織と真結を連れて、結婚をするつもりと知らせに行ったとき、父親から、320万円が預けられた周作名義の預金通帳を渡された。父親が蓄えたものでなく、少しずつ預けられたものだった。誰が何のためにの理由も聞かされず、その半月後父が倒れ、天涯孤独の身になることを予感する。
物語は、母が居ないことの意味、この預金通帳の秘密、そしてこれから真結の父親になることが出来るのかという不安が絡み合い展開する。
展開は現在の<2017年秋、冬>の現在と、<1992年秋、冬、1993年冬、春>の父親の将彦が生きていた過去の時点の情景を織り交ぜながら次第にラストへと進んでいく。
母親の松宮由美子の、傷害致死事件の真相に迫る過程はミステリー性、父親となることが出来るのかという家族の問題は、まさに家族小説の神髄に迫るもので、読み応えのあるものである。
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