額賀澪 『ヒトリコ』



              2022-06-25


(作品は、額賀澪著 『ヒトリコ』    小学館による。)
                  
          

   本書 2015年(平成27年)6月刊行。
  本作品は第16回小学館文庫小説賞受賞作品に大幅に加筆、改稿したもの。

 額賀澪
(ぬかが・みお)(本書による)

 1990年、茨城県行方郡麻生町(原・行方市)生まれ。10歳の時に初めて小説を書く。高校卒業後は小説家を目指し日本大学芸術学部文芸学科へ入学、創作やDTPを学ぶ。卒業後は広告代理店に勤務、創作の仕事をしながら小説の創作を続ける。2015年「ヒトリコ」(本作)で第16回小学館文庫小説賞受賞。同年「屋上のウインドノーツ」(「ウインドノーツ」を改題)で第22回松本清張賞を受賞。

主な登場人物:

深作日都子

小学5年生の9月24日を機に、 友達とも仲良しだった日都子は変わる。それは世話係の金魚が死んだ日。

海老沢冬希
母親 薫

日都子と生き物係として金魚の世話をしていたが、冬希が東京に転校、金魚が死んだことでクラスの雰囲気が一変。
・母親は人が変わったようにクレームママ。
茨城では祖母と犬猿の仲だった。

堀越明仁 日都子が変わってしまう前の状態が「ずっと、あんたが好きだった」と告白するも、ヒトリコとなった日都子は「昔みたいに戻ったりはしないから」と。
大都嘉穂(おおつ・かほ)

日都子とは幼稚園からずっと仲良しだった。金魚の死に、日都子のことを、思っていたことと異なる言葉を発していた。
明仁と日都子、ふたりとも奈落に落ちてしまえと願う。

山野智代(ともよ) 一人だと何も出来ないくせに、誰かと一緒だといじめ紛いのことも平気で出来る。
片岡美香子 中学3年2組の時の合唱コンクール委員。 その強引な指導方法にトラブルが発生する。
平塚藍(あい) 中学3年2組の時の合唱コンクール時の伴奏者。病弱のため、予備で日都子。 自転車通学で怪我をし、美香子に手ひどい仕打ちを浴びせられ、不登校に。
本柳先生 5年生の時の担任。 ヒス柳の渾名。 冬希が大切に世話していた金魚を死なせてしまった(?)日都子の頭をげんこつで殴る。
瀬尾佳乃(よしの) 行方(なめかた)高校での文化祭実行委員長、高校三年生。
[行方高校1年4組]関係者

・担任 生井沢(なまいさわ)篤志
・海老沢冬希 東京から祖母の居る茨城に、母を残して4年ぶりに戻ってくる。
・深津日都子、堀越明仁、大都嘉穂

キュー婆
(名前は給前)

日都子とは隣の地区、明仁の近所に住む、一人暮らしでピアノ教室を営む偏屈な老婆。 日都子がピアノを習いたいと通う。
日都子には「あんたは一匹狼すぎるんだよ。もうちょっと人と関わった方がいい」と指摘。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 クラスで飼っていた金魚殺しの濡れ衣から、壮絶ないじめの対象となった日都子。その日から、彼女は「みんな」には属さない「ヒトリコ」として生きる決心をする…。
〈受賞情報〉小学館文庫小説賞(第16回)

読後感:

 主人公の深作日都子は、冬希が東京に転校していったあと、それまで生き物係として、かって冬希が本柳先生に頼み込んで実現した、金魚の世話(水槽の水替え)は、冬希が全て行っていたのが、自身で行わなくてはいけなくなった。 しかるに9月の連休明け(9月24日)金魚が死んでいた。
 日都子が原因でないのに、本柳先生から、さらに、仲良しだった嘉穂から追い打ちを掛けられ、クラス全員からはじかれてしまう。以降日都子は「関われなくてもいい人とは、関わらない」とヒトリコとなる。

 そんな中、小学校から幼馴染みだった堀越明仁からの「ずっと前から、好きだった。 だから以前の日都子に戻って欲しい」と告白されるも、「戻らない」と突っぱねる。
 大都嘉穂は、そんなふたりの仲を苦々しく思っていたし、明仁を好きだったのかも知れないが、ふたりとも奈落に落ちろと願う。 嘉穂にも工場見学での昼食時間のとき、自身の弁当が祖母の作ったのは茶系統で地味なのを恥じて、一人で食していたとき、明仁から皆と違うのは格好いい、弁当箱を木製にしたらきっと映えるとアドバイスされ、そうしたことがあった。

 ヒトリコの日都子も、キュー婆さんのピアノ教室に習いに通う中、厳しい言葉にも、何故かキュー婆には心が拓かれる物を感じる日都子であった。
 堀越明仁は、日都子に振られたあとも、日都子の様子を見守り続けている。
 合唱コンクールでの片岡美香子の指導ぶりに、次第にクラスの中に亀裂が生じ、文化祭の当日事件が起こる。
 日都子の強気の態度に関わらず、時に9月24日の金魚の死が思い出されて、吐いてしまうことも。

 いじめに対し、日都子の対応は強くて好ましいところもあるが、キュー婆さんが指摘するように「ほどほどに頑張んなさい」「あんたは一匹狼すぎるんだよ。もうちょっと人と関わった方がいい」とかのアドバイスがいい。

 高校に進学した後半になり、海老沢冬希が茨城に戻ってきて、1年4組で同じクラスになる。 文化祭の行事に伴い、彼らの中に化学変化が起きる描写が頂点に向かう。
 日都子の「関われなくてもいい人とは、関わらない」を逆手に、関わりたいとする人が日都子を変え、金魚の死の真相も明らかに。
 登場する茨城の場所の環境状況もごく田舎の様子が描かれていて、なるほどの思いが。


余談:

 田舎の情景を感じるひとつに、屋号の呼び名が出てきて、調べたくなった。
  屋号について:
  屋号とは
  1 家屋敷の各戸につける姓以外の通称。先祖名、職業名、家の本家・分家関係などによって呼び分けた。家名?(いえな)?。門名?(かどな)?。
 2  商店の商業上の名。生国や姓の下に「屋」をつけたものが多い。「越後屋」「三好屋」など。
  3 歌舞伎俳優などの家の称号。「音羽屋」「成田屋」「成駒屋」など。
 作品に登場してきた例として
 ・深作日都子の家の屋号 甚兵衛 
 ・堀越明仁の家の屋号 長屋
 ・キュー婆さんの屋号 久兵衛 

 

背景画は、自然いっぱいの素材集がErrorとなって消失してしまったので、背景素材無料のものからに。

           
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