乃南アサ著 『幸福な朝食』 






                
2009-11-25




 (作品は、乃南アサ著 『幸福な朝食』 新潮社による。)

           

 1988年11月刊行
 第1回推理サスペンス優秀作受賞作品。


乃南アサ:
 1960年(昭和35年)東京生まれ。早稲田大学中退後、広告代理店勤務などを経て、作家活動に入る。96年(平成8年)本書「凍える牙」で直木賞受賞。
・巧みな人物造形、心理描写が高く評価されている。

<主な登場人物>
 
沼田志穂子 女優を目指すが、柳沢マリ子に先を越され、人形劇の人形使いとして全く影の存在に徹するが成功しつつある。 柳沢マリ子にそっくりの美人で事務所からそっくりさん番組に出さされたこともある。柳沢マリ子に取って代わろうとする思いを持っている。
柳沢マリ子 志穂子より1年先に芸能界に出、人気アイドルから中堅女優としての地位を固めつつある。
千葉広美 人形劇が大好きで劇団に入ってきた新人。 現代っ子らしく若々しくて当初志穂子を尊敬、志穂子も仕事場の外で急速に親しさを増すが・・・。
池田のぶ子 劇団所属で志穂子より2〜3歳年下。 主婦の座のものいいで志穂子をいらだたせる。
弓子 昔の友人、志穂子と同居していたが、トラブルが・・・。
ミカ 志穂子の話相手。何者?
青山良助 志穂子の人形(主役)の声をやる新進俳優。 声優でなく俳優として準レギラー級の役を狙っている。
佐藤 ドラマのディレクター。 志穂子の便宜をはかってくれる。
井岡 佐藤に代わるディレクター。
伊吹 俳優を目指していたが、田舎に帰り、人形造りをめざす。


<読後感>

 内容は、1年先に登場したということで柳沢マリ子に先を越され、脚光を浴びてに人気スターの座をとられ後塵を拝した女優を目指す沼田志穂子が人形劇という黒子の世界で過ごすという未知の世界の様子が新鮮である。そして女の情念、芸能界の乱れた関係、陰湿な世界が心理的なものも織り交ぜ描かれているが、ちょっと今まで読んだ乃南作品と様子が異なっている感じを受けた。

 情景場面がちょくちょく分からなくなってしまうこと、暗さも気になることなど。読むきっかけが推理サスペンス優秀作品と言うことだったので読み始めたのだが、ちょっとうん?というところ。
 
 なるほど、作品の年代が著者の最初の頃の作品のようだし、本の最後に付いている第1回日本推理サスペンス大賞 選評(4作品からの選評)をみてなるほどと思った。評価自身手放しでない厳しい評価が記されていた。大賞でなく、優秀作として本作品が選ばれたようだ。
とはいえ心理的なサスペンス的なものもあり、それなりに面白く読めた。


   


余談:
 著者のエッセイ「好きだけど嫌い」のあとがきに、作家が原稿をなんとか書き上げたというところで、書き終えて本が出版されるまでの間の諸々の作業内容が記され、そしてものを書き終えたという喜びの時とかけじめを付ける時がなかなかはっきりしないことが記されていた。「一体いつ喜べばいいんだろう」という言葉が印象的。

背景画は作品に出てくる人形劇団にちなんで、人形劇団京芸のHPを利用して。   

        

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