乃南アサ著 『禁猟区』 









              2013-08-25



 (作品は、乃南アサ著 『禁猟区』  新潮社による。)

                  


 初出 禁猟区    小説新潮 2008年5月号
    免疫力    小説新潮 2008年11月号
    秋霖     小説新潮 2009年11月号
    見つめないで 小説新潮 2010年2月号(「凋落」を改題)
 本書 2010年(平成22年)8月刊行。


乃南アサ:

 1960年(昭和35年)東京生まれ。早稲田大学中退後、広告代理店勤務などを経て、作家活動に入る。96年(平成8年)本書「凍える牙」で直木賞受賞。
・巧みな人物造形、心理描写が高く評価されている。

<主な登場人物>
 

本庁警務部人事第一課
調査二係

警視庁警察官に対する賞罰を査察し、処分を決定する部署。
・岩瀬係長 50間近。
・夏木主任 30代。
・沼尻いくみ 最年少の20代。表彰でない方を担当。
・三瓶副主査(さんべ) 50間近。
・嵯峨監察官
・栗原課長代理

◇禁猟区
若山直子

主任、巡査部長。数年に一度ずつ異動を繰り返す。
夫は中学の数学教師、妻の行動には関心を示さず、次女は大学3年でバイトとサークル活動でほとんど家にいない。
昔助けた内田に再会、ホストに熱を上げ・・・。

上条志求魔(しぐま) ホストクラブ「夢うさぎ」のホストで源氏名、本名内田潤。
◇免疫力

風祭毅
(かざまつりたけし)

六本木警察署組織犯罪対策課主任。子供が悪性リンパ腫のステージWのとき、あるものに出会い奇跡的に助かる。
島本 広域暴力団の四次団体、島本組の組長。14歳の姪っ子が白血病で風祭の話を聞き・・・。
◇秋霖
小池重男(53歳) ‘94年調布の資産家女性強盗殺人事件の時効まで1ヶ月、専従捜査員の小池、巡査部長。20年以上の刑事人生で容疑者を逮捕した経験なし。捜査情報は外に漏らしちゃうって噂。
岡林一之 新婚ほやほやの刑事2年目の若い刑事。
◇見つめないで
内野弘光 元刑事、今は家賃滞納者の取り立て屋に。
会津 刑事、内野と同い年、内野に仕事を世話。駒沢署にいた頃沼尻いくみと知り合い惚れる。内野に口説き方教わる。
沼尻いくみ(28歳) 香奈恵がマンションを出ていくのを機に、いくみが譲り受けるも、送り主不明の悪趣味の贈り物が届き出す。


物語の概要

君なのか、俺を嗅ぎ回っていたのは。警察内部の犯罪を追う監察官はプロを追うプロ。隠密作戦を貫いて四方から密猟者を狩出してゆく…。監察チームの頭脳プレーを描く本邦初の警察インテリジェンス小説、ここに誕生。

<読後感>

 題材は警察、でも主役は監察部門が刑事の好ましくない行為をそっと調べ、成就する前に裁くというこれまでの刑事物とは一線を画する物語。

 だだ最後の「見つめないで」では主役の沼尻いくみが、くしくも犯人から襲われる対象となり、どう対処していけばよいのか分からないところで、職場の仲間達の助けで救われ、今更ながら仲間の思いやりに感謝と幸せを感じるおちがさわやか。

 それまでの章では何となく人を裁く側の立場が、裁かれる人間の何でという感覚を表しているだけに、逆の立場に立たされた時の恐怖、頼りなさが表れていて、バランスが取れた感じで纏められている。

 表題の「禁猟区」はどういう意味を持ったものかと最初は思ったが、全体を読んでみると、ちょっと意外な感触である。

 内容を知らないでこの表題を見て、手に取ったが、ちょっと意外な感じを受けた。どうも最後のお話が印象深かったのだが・・・。

   


余談:

 乃南アサの作品というと、直木賞受賞作品の「凍える牙」が最初に読んだ作品で、感銘も深かったが、その後の作品も読んだが暫く読まなかった。今回久しぶりに読んだが、大分趣が違ったような。読み手側が変わったのか?この後も読んでいって見たい作家の一人である。

             背景画は「見つめないで」作品中に関連する沼尻いくみの郵便受けの搾取に関連して。             

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