乃南アサ著 『風の墓碑銘』 







                   
2009-03-25



 (作品は、乃南アサ著 『風の墓碑銘』 新潮社による。)

            



初出 「週刊新潮」2004年6月から2006年6月まで連載。
2006年8月刊行

乃南アサ:
 1960年東京都生まれ。早稲田大学中退。88年「幸福な朝食」が第1回日本推理サスペンス大賞優秀作に選ばれる。
 

<主な登場人物>
 
音道貴子 隅田川東署勤務の巡査部長、36歳。バツイチで、付き合っている昂一は不治の病を抱え、この先どういう関係を続けていけばよいのか悩んでいる。相方になった滝沢とは、優秀な刑事とはわかっているが、女性軽視の権化のような態度、言いぐさになかなかなじめない。
滝沢 保

40半ば過ぎの金町署勤務の警部補。春までは本庁捜査一課の特殊班に2年以上続けていた。バツイチで、倅謙、末娘真奈美、嫁に行った長女を男手ひとりで育てた。隅田川公園内における老人殴打殺人事件の捜査本部で、音道貴子とコンビを組むことになるも、貴子の扱いにとまどうことが多い。

玉城警部補 墨田区東向島の解体工事中の住宅跡から発掘された白骨死体の捜査で音道貴子と身元調べを担当中であったが、殺人事件でそちらに招集される。
藪内奈苗 音道貴子より2歳年上、鑑識の警部補。修ちゃんとの波瀾万丈の愛憎劇を演じ、貴子とはよき相談相手であったが・・・。


<読後感>

 なかなか面白いミステリーだと思う。刑事物として、コンビの警官のキャラクターといい、主人公の音道貴子の生活感、日常の人生の裏も描かれ、単に推理小説の域にとどまらず、社会現象の模様もリアルに描かれて、普段の生活の中での展開が読んでいて違和感なく受け入れられる。

 乃南アサという著者の作品は初めて手にしたのがこの作品であったが、また注目の作家に恵まれたかなという感じである。

 なにかずっと読んでいたい小説で、このまま事件が収束しないでいてくれてもいいかと思わせる風の日常の仕事ぶり、生活ぶり自身が読み物として引きつけられる。

  滝沢と音道のコンビの合わなさ、でも内部の所ではお互い気を遣っているあたりもほほえましく絵になっている。

 是非直木賞作品の「凍える牙」を読もう。


   


余談1:
 この後、「凍える牙」、「涙」などを読んだがなかなかの作家のようだ。図書館でもほとんどの作品が貸し出しの状態である。同じような作品が少ない(?)ようだし、単なるエンタテインメント作品でもないようで、楽しみな作家でもある。

                  背景画は本書の裏表紙を利用。             

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