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           乃南アサ著 『駆け込み交番』 









                
2011-03-25



 (作品は、乃南アサ著 『駆け込み交番』 新潮社 による。)

            


初出 とどろきセブン 小説新潮2004年3月臨時増刊「警察小説大全集」
   サイコロ    小説新潮2004年4月号
   人生の放課後  小説新潮2004年10月号
   わんわん詐欺  小説新潮2004年12月号
本書 2005年3月刊行

乃南アサ:
 1960年(昭和35年)東京生まれ。早稲田大学中退後、広告代理店勤務などを経て、作家活動に入る。96年(平成8年)本書「凍える牙」で直木賞受賞。
・巧みな人物造形、心理描写が高く評価されている。

<主な登場人物>
 
高木聖大(24歳)

世田谷区等々力警察所管内の「不動前交番」勤務の巡査。
元々こらえ性も根気も人一倍ない。

藤枝主任(28歳) 「不動前交番」勤務の情緒不安定の先輩。聖大と同じ独身寮暮らし。
森尾警部補
(35−6歳)

不動前交番所長。

神谷文恵

高級マンションの最上階に犬と暮らす資産家の未亡人。マンションのオーナー。亡き夫の仕事の都合で10年以上も海外生活経験者。
総勢7人の“とどろきクラブ”を結成している。

とどろきセブンのメンバー

・ナヲ 文恵の幼なじみ。下町のおかみさん風。鳶の家だったが夫がガンでなくなり生活一変。現在は文恵のマンションの一室に一人暮らし。
・横尾 棟梁。
・高藤 元植木職人。玄人はだしの料理人。
・梶本 元電気工事店主。老人向けのパソコン教室を開いている。
・日色 元映画館の看板描き。趣味 占い師。
・薄井 元「リヴィエール」のオーナーシェフ。


<物語の概要> 図書館の紹介文より

 さる老婦人が深夜の交番に駆け込んで来たのをきっかけに、何故だかお手柄続きの勝ち組み新米巡査・高木聖大。ヤル気のない先輩に悩まされつつ所轄を駆け回るうち、十数年来の未解決事件を解く糸口を掴んでしまい…。

<読後感>

 4つの短編集であるが、内容はつながっている。ただ「とどろきセブン」だけは時系列的には最初に来るものであるが、“とどろきセブン”の形成の背景が記述されている。
 刑事物としては一番市民生活側に位置するお巡りさんの物語といったもので、血なまぐさい犯罪とか、強盗事件とは遠いごく身近な事件を扱っていて、日頃お回りさんはこんな生活をしているのかと見直すきっかけにも。

 何ごとにも生真面目で、あれこれ気をまわす若者と、気分屋でいつも聖大を苛めているような藤枝主任との対比が愉快であり、その上司に当たる森尾所長も藤枝主任には手をこまねいている姿はいかにもおっとりとした交番風景。
 若い彼女が希望なのに、老人の集まりの“とどろきセブン”の面々に人気の聖大が先輩の藤枝主任に皮肉を言われたり、うらやましがられたりしながら手柄を立てることになる些細な事柄が何故かほっとするような作品である。

   


余談1:
 
 小さくて些細な出来事で毎日が過ぎていくことの素晴らしさを感じる、そんな生活はなんと贅沢なことか。そんなことを見直させてくれる作品であった。

背景画は本書の内表紙を利用して。 

                              

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