乃南アサ 『 鍵 』



              2020-12-25


(作品は、乃南アサ著 『 鍵 』      講談社文庫による。)
                  
         

 初出 1996年12月に講談社文庫から刊行。
 本書 2015年(平成27年)8月刊行。

 乃南アサ
(のなみ・あさ)(本書より)  

 1960年東京生まれ。’88年「幸福な朝食」が第1回日本推理サスペンス大賞優秀作となる。’96年「凍える牙」で第115回直木賞、2011年「地の果てから」で第6回中央公論文芸賞をそれぞれ受賞。主な著書に、「ライン」「窓」「鎖」「不発弾」「火のみち」「風の墓碑銘」「ウツボカヅラの夢」「ミャンマー 失われるアジアのふるさと」「犯意その罪の読み取り方」「ニサッタ、ニサッタ」「自白 刑事・土門功太郎」「すれ違う背中を」「禁漁区」「地球の穴場 仙人の村から飛行船まで」「いちばん長い夜に」「新釈 にっぽん昔話」「それは秘密の」など多数。 

主な登場人物:

[西家]
俊太郎(25歳)

大学では地球物理学を専攻。商社マンに、3年で辞め25歳の若さで隠居生活に。家賃収入で暮らしは何とかなっている。
母親が亡くなってから麻里子に対する態度が変わる。

姉 秀子 中高一貫私立中学の教師。俊太郎より4つ年上。気丈。
妹 麻里子 高校2年生。聴覚障害を持ち、小学校の高学年から健聴者と同じ一般の学校に。高校で雅美と補い合う形で仲良しに。母親に可愛がられて育つ。家に帰る途中神社の裏で通り魔に襲われる。
両親 去年母親は55歳の若さで癌で逝き父親も追っかけるように亡くなる
川村有作 新聞記者、高校の時から俊太郎と親しく、大学では法律専攻。

東雅美(17歳)
(あずま・まさみ)

麻里子の親友。俊太郎に惹かれていて、家庭教師を依頼する。
大木みたいな神経の持ち主。

鎌田 秀子と五年越しの付き合いの恋人。商社マン。
杉本寛(ひろし)

自転車に乗った通り魔事件の犯人と目される。
株式会社学伸研究サービスという学校教材の納入会社の営業マン。刺殺死体で発見される。

須栗(すぐり) 秀子が勤める学校の事務員。杉本と会ったこともある。
片瀬 秀子が勤める学校の教頭。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 両親を相次いで失った上に、兄との関係もこじれてしまった女子高生の麻里子。彼女の鞄の隙間に知らぬ間に挟みこまれた鍵は誰のもの?

読後感:

 両親を時を経ず亡くし残された三姉弟(秀子、俊太郎、麻里子)のあり方は、秀子が母親に似てくるも、来年には結婚して二人残される予感の俊太郎。
 母親が居た頃は、母さんを独り占めしてきた麻里子を羨ましく思って居た俊太郎は、母が亡くなり、麻里子に対しする態度が冷たくなっている自分を何とかしなくてはと反省するも、なかなか素直にはなれない。

 そんな中、麻里子が満員電車の中でハプニングに巻き込まれ、鞄を切られ、中に鍵の存在に気づく。一方、住んでいる世田谷では通り魔事件が頻発して、新聞記者で俊太郎の親友の有作が事件を追っている。

 物語は通り魔事件の真相が次第に明かされるが、それには麻里子の鞄に隠されていた鍵を巡る顛末が関わるのだが、西家の残された三姉弟、麻里子が聴覚障害を持つ身であること、俊太郎の麻里子に対する気持ちのよどみ、有作や麻里子の親友の雅美の俊太郎へのアタック振りが展開されながら、意外な犯人がラストに向かって展開していく。


余談:
 
 乃南アサ作品は過去に「凍える牙」を始め結構な作品を読んできたが、今回の「鍵」の出来映えはごく平凡な印象がぬぐえない。気楽に読める作品という所。
背景画は、自然いっぱいの素材集がErrorとなって消失してしまったので、背景素材無料のものからに。

           
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