主な登場人物:
蒔田百合(32歳) |
父は繊維メーカーの専務、裕福で1LDKの家賃も親が負担。中途入社の会社を上司から叱責されたために会社を辞め、瀬戸内海の離れ小島のホテルに一人旅に。 |
姉 |
3つ年上の姉。18の時からずっと家から一歩も出ない。小さいときの姉は皆の注目を集めたが・・・。 |
堀井早百合 |
女子校時代の同級生。休みの時間文庫本を読み、自作の小説を書いている。
言葉を交わしたことがあるも、女子グループから早百合がいじめをされていたとき、百合は見ないふりをして見過ごす。
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坂崎 |
ホテルのバーのバーテンダー。 |
マティアス |
ドイツ人、24歳。16歳の時に母親を亡くなり、お金は死ぬまでに使い切れないほど残されていて、ホテルの特別室に泊まっている。
超マザーコンプレックス、何の仕事をすれば良いのか分かりませんと。
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物語の概要:図書館の紹介文より
会社を逃げ出した女・百合、丁寧な日本語を話す美しい外国人・マティアス、冴えないバーテンダー・坂崎。非日常な離島のリゾートホテルで不思議に近づく3人の距離。彼らを動かす、圧倒的な日常の奇跡。
読後感:
主人公の蒔田百合、相手が自分をどう見ているかに終始神経を尖らせている。相手の私に対する評価が下がることの恐怖にいても立ってもいられなくなる。そして自分の居場所を確保することに汲々としている。そんな自分だから、高校時代せっかく友達になれそうな堀井小百合がいじめを受けているのを心の中では止めようと言いたいのを言えなくて見ないように過ごしてしまう自分に愛想を尽かす。
一方、3つ年上の姉の存在が自分を恐怖に陥れる。美しく回りから注目を集め、物事の中心にいるような存在が、高校になって家庭から離れた高校に行くと、一転見向きもされなくなり、次第に家にこもるように。そんな姉の姿を見るにつけ、自分にもその血が流れていることへの恐れ。
すべてを放り出し、瀬戸内海の島にひとり旅に出かけて遭遇した不思議な人物との出会いとその交わりから、次第に解き放たれて自然に帰った己の気持ちの穏やかな気持ち。そんな中で姉のことを思うと昔の可愛がってくれた姉の姿を思い出す。
あまりに自分を見つめすぎるところは神経質すぎる感じを受けるが、こういう面を自分も持ち合わせているところから、なかなか興味深い作品であった。
ホテルで出会う二人の人物の非日常的すぎる素性と性格にこういう人が実際には存在しないだろうけれど、いて欲しい人々ではある。
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