西加奈子著 『 i (アイ) 』








              2019-02-25

(作品は、西加奈子著 『i(アイ)』     ポプラ社による。)
          
  
  本書 2016年(平成28年)11月刊行。書き下ろし作品。

 西加奈子:

 1977年、テヘラン生まれ。カイロ・大阪育ち。2004年「あおい」でデビュー。07年に「通天閣」で織田作之助賞、13年に「ふくわらい」で河合隼雄物語賞、15年に「サラバ!」で直木三十五賞を受賞。ほか著書に「さくら」「きいろいゾウ」「円卓」「漁港の肉子ちゃん」「舞台」「ふる」「まく子」、絵本に「きいろいゾウ」「めだまとやぎ」「きみはうみ」など多数。     

主な登場人物:

[ワイルド家の関係者]

ワイルド増田アイ
<アイ>

アメリカ人の父と日本人の母を持ち、しかも養子の女の子。出生地はシリア。どうして自分でなかったのかと、世の中の出来事中で死者の数をノートに記す行為は・・・。
大学では理工学部数学科に院へと進む。

父親 ダニエル 航空部品メーカー勤務。定年前に退職し、人道支援団体に所属し活動に。
母親 綾子
アニータ ハウスシッター。3人の子持ち。4人目を出産後、金を盗んだことの理由で正義感の強いダニエルは解雇する。
パウウソティア アニータの後継者。

権田美菜
<ミナ>

アイの高校時代の親友。以降もずっとアイと交流。アイに「私はセクシュアリティ」と告白する。
家は老舗のこんぶ屋。親はミナに後を継がせたいが、反発。ロスに旅行、ミラという女性と一緒に暮らしている。

内海義也(よしや)

高校時代、進学せずミュージシャンを目指すと皆を驚かす。
アイの初恋の人。

佐伯裕(ユウ) アイと結婚。きっかけは2011年3月11日の東日本大震災後一人家に籠もっていたアイが原発反対デモに出向いたとき「写真を撮ってもいいか」と声を掛けられた。当時裕、42歳、アイ、25歳。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

「この世界にアイは存在しません」。入学式の翌日、数学教師は言った。その言葉は、ワイルド曽田アイに衝撃を与え、彼女の胸に居座り続けることになる。ある「奇跡」が起こるまでは…。          

読後感:

 小説の中に度々出てくるフレーズ「この世界にアイは存在しません」。これは高校入学式後の最初の授業で数学の教師(「アテネ」と渾名されている風間)が話したフレーズ。これを聞いたワイルド増田アイ(帰国子女)は”この世界にアイは存在しません”の声がずっと胸に刻み込まれ、ことあるごとに思い起こされる。
 
 さて、生い立ちから容姿も日本人とは異なるし、両親とも血のつながりがなく、悩みも多い彼女が本当の友に出会えたミナ(本名権田美菜)という子との交友上での出来事に。
 初めての初恋の人内海義也の言動に。そして結婚にまで到る佐伯裕との交流に。

 世界中の悲しむべき出来事に心を痛めるアイが、果たしてどういうことからあの声から決別でき、新しく生きがいを見つけたか。
 中でもアイの不妊治療、妊娠して血縁関係が築けると希望に胸を膨らませたにもかかわらず、心拍が聞こえないと医師に語られ、絶望。そんな時本当の親友で「私はセクシュアリティ」と告白されたミナから、「妊娠した」と告げられた時のショック。しかもその相手が・・・。

 それからどうやって決別できたのか。
 読んでいて自身の現状をすごく反省し、世の中の動きの見方も変わってくるかも知れない。
 

余談:

 帯文に中村文則の「ずっと感動に浸っていました。なんてすごいんだろう」、又吉直樹の「残酷な現実に対抗する力を、この優しくて強靱な物語が与えてくれました」に納得。    
背景画は、花をテーマに。(自然いっぱいの素材集より)

           
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