西加奈子著 『ふくわらい』









              
2012-12-25


(作品は、西加奈子著 『ふくわらい』 朝日新聞社による。)

              

 初出 「小説トリッパー」2011年秋季号から2012年春季号
 本書 2012年(平成24年)8月刊行。

 西加奈子:(本書より)
 1977年テヘラン生まれ。関西大学法学部卒業。2004年「あおい」でデビュー。05年「さくら」が25万部を越えるベストセラーになる。07年「通天閣」で織田作之助賞受賞。著書に、「白いしるし」、「円卓」、「漁港の肉子ちゃん」、「地下の鳩」など多数。

主な登場人物 : 

鳴木戸定
(なるきどさだ)(主人公)
父 栄蔵
母 多恵
婆や 岸田悦子

“マルキ・ド・サド”から定の名前取られる。
多恵の死んだ5歳から父親の死んだ12歳の時まで様々な国に取材旅行に連れて行かれ、様々な体験をした。25歳の現在雑誌社の編集担当でいる。滅多に笑うことなく、感情を表すのは希。
父親の栄蔵は紀行作家でほとんど家にいないで外国の貧しい国や未開拓地を旅して、鰐に食われて死ぬ。
父親の死後親戚に引き取られ、目の不自由な岸田悦子が面倒を見る。

小暮しずく 定より1年後に入ってきた女性編集者4人の中の一人。美人。

守口廃尊
(ばいそん)
(46歳)

大変扱いにくい作家であり、プロレスラー。“週刊事実”に連載していたが、連載を終了させ、単行本化することで定が担当に。
武智次郎 ハーフ、網膜色素変性症でだんだん目が見えなくなり、今は光やぼんやり輪郭が見えるだけ。JR新宿駅で定と出会い、その後は毎日のように電話を掛けてくる。

水森康人
(91歳)
妻 ヨシ
(79歳)

文学賞を数々受賞の高名な作家で変わり者。岸田悦子と同じ目の病気で見えない為、妻のヨシが口述筆記している。定の担当作家だが、定に対しては暴挙は少ない。鳴木戸栄蔵の作品を尊敬している。
之賀さいこ 定の担当する連載中の男の作家。雨が降ると雨音が気になって書けないという。雨が止めば書くと言われ、定は昔父と行った南米のある国で行われていた雨乞いの儀式をやる。


物語の概要図書館の紹介より
 
 マルキ・ド・サドをもじって名づけられた書籍編集者の鳴木戸定。感情を出さない彼女は、猪木に憧れるレスラーなどとの付き合いを通じて、人との距離を縮めていく…。本年度最大の問題作にして、極上の感動小説。

読後感:

 何とも奇妙で不思議な感覚になる小説である。ちょっとそんな気になった本は過去に読んだ桜庭一樹著の「赤朽葉家の伝説」を読んだ時かなと。
 鳴木戸定という名前とか、作家の之賀さいこ、レスラーの守口廃尊とかの名前もちょっと異常。さらに人肉を食したり、父親の栄蔵の死にざまもこれまた異常。武智次郎のやはり視力不良の人物との交わりもあまりいい気持ちもしない。いったいどうなるのかと思ってしまう。

 でも何となく引かれるところがあるのはどういう訳か。西加奈子という作家のことを何も知らない。さてどうしよう。結局最後まで読み切ってしまったが、実は正常でないけれどもピュアーと言うか純真というかそういう物が底辺に流れているため、本当の意味での人間の優しさのようなものを持ち合わせた人間の生き様なのかなと。そういう物があるために最後まで読んでしまったのかも。

  

余談:

 こういう作品にも挑戦してみる意義はきっとあるはず。

背景画は。本書の装丁に使われている絵を利用して。

                    

                          

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