西加奈子著 『 円卓 』






                  
2015-11-25




(作品は、西加奈子『 円卓 』       文藝春秋による。)


          

 
 本書 2011年(平成23年)3月刊行。

 
 西加奈子:(本書より)
 
 1977年テヘラン生まれ。カイロ、大阪で育つ。関西大学法学部卒業。
 2004年「あおい」でデビュー。05年、2作目の「さくら」がベストセラーになる。07年「通天閣」で織田作之助賞を受賞。他の著書に「きいろいゾウ」「しずく」「こうふく みどりの」「こうふく あかの」「窓の魚」「うつくしい人」「きりこについて」「炎上する君」「白いしるし」、エッセイに「ミッキーかしまし」「ミッキーたくまし」、絵本に「絵本 きいろいゾウ」、共著に「ダイオウイカは知らないでしょう」などがある。

主な登場人物:

<渦原家>

 渦原琴子
(通称 こっこちゃん)

小学3年生、早生まれ8歳。香田めぐみさんに憧れる。
想像力は並大抵のもの。こっこは三つ子の姉と同じ6畳に寝る。こっこに「孤独」は訪れない。キレたときは手がつけられない。

 三つ子の姉(14歳)

美人で人気者。
・理子 バスケット部。
・眞子 ソフトボール部。
・朋美 手芸部。

 両親

渦原家は大家族。公団住宅のB棟3階の一、3LDK。
・父親 寛太(35歳)便利屋で家族を養っている。学生時代ラグビーの選手。
・母親 詩織(39歳)美人で阿呆。素直な性格。

 祖父母

・祖父 石太(68歳)頑固でひねくれ者。文字が好き。
・祖母 紙子 図太い。

ぽっさん 共働きの両親と五つ年上の兄さんの四人家族。こっこの新生児のときからの幼馴染。学級の切り込み隊長。吃音の男子児童。
香田めぐみさん とっても大人びた女子児童。男・女の間で人気のある美人。ミステリアス。
(パク) 学級委員で在日韓国人。父親は大学教授。母親は在日3世。ずいぶんな豪邸。
ゴックン ベトナム人。

矢内
(通称 ちゅーやん)

有名な家電量販店カネオシ電機社長の息子。母親はお妾さん。金持ち、複雑な家庭の子、孤独。
ジビキ 担任の教諭、31歳独身。

物語の概要:
 図書館の紹介より

 三つ子の姉をはじめ、大家族に愛されて暮らす小3の琴子は、口が悪くて少し偏屈。好きな言葉は「孤独」…。新たな命や夏休みのある出来事を経て、悩み考え成長する姿をユーモラスに温かく描いた感動傑作。

読後感: 

 主人公の渦原琴子(通称 こっこちゃん)は小学校3年2組の女の子。渦原家は8人家族で3LDKのアパートの3階に住む。幼なじみのぽっさんは隣の棟の3階でこっこの部屋からベランダ越しに部屋の様子が見える。
 上の姉たちは三つ子で一部屋に4人で寝起き、こっこちゃんの願いは“孤独”になりたいこと。クラスには香田めぐみさんというとても大人びた女子児童でこっこの憧れの人。美人でミステリアスで男と女の間でとても人気がある。ものもらいで眼帯をしためぐみさんをみて自分もと保健室に行き、言いがかりをつけて眼帯をして教室に。

 切れると乱暴な言葉遣いになるこっこちゃんがいい。有名な量販店カネシオ電機社長の息子ちゅーやんの「金持ちやゆうても複雑な状況にいるちゅーやんは孤独」というそこはかとない哀れみの気配に「貧乏やけど、家族仲良し、幸せやんな!」という家族の雰囲気に反発。孤独を愛するこっこちゃんは不機嫌なのがいい。

 ぽっさんは吃音だけどそれを格好いいと思うこっこ。お母さんの詩織にお目出度の話で家族が喜ぶ様子を見てこっこは「嬉しない」と。ちゅーやんに向けるような、「いうてあの子孤独や」「可哀想」というその憐れみが欲しいのにと言うこっこがいい。
 姉たちは幼いながら近寄りがたい空気のこっこのことを「こっこ、優しいからな」と。

 ぽっさんはこっこにとって兄のようであり、恋人のようでもある。
 こっこが妹か弟が出来る話にため息をつき、ぽっさんに気持ちを打ち明けるシーン、そして香田めぐみさんの眼帯姿を格好ええとこっこが真似たり、ぽっさんの吃音を格好ええと羨ましがったりすることにぽっさんが諭す様子。
 ぽっさんが夏休みお墓参りで居なかったとき、こっこが味わったことを戻ってきたぽっさんに打ち明けるシーンなど。こっこの行動、言動、様子を見ていると著者の感性が伝わってくる。

   
余談:

 西加奈子の作品は「ふくわらい」で読んだことがある。その時もちょっと不思議な感覚に陥ったことがある。でもその底にある“本当の意味での優しさ”に惹かれたと記していた。
 今回の作品、主人公のこっこの振る舞いにはやはりその底に純真さ、優しさが見え隠れしている。さらに西加奈子作品を読みたくなった。

               背景画はこっこちゃんが憧れている大人びた香田めぐみさんがものもらいで眼帯をしている姿に
              憧れる様子をイメージして。(映画「アナザー」(橋本愛)のフォトより)                       
 

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