夏川草介著  『神様のカルテ3』








                2012-11-25

 (作品は、夏川草介著 『神様のカルテ3』   株式会社小学館による。)

              

 本書 2012年(平成24年)8月刊行。

 夏川草介:
 1978年大阪府生まれ。信州大学医学部卒業、長野県の病院にて地域医療に従事。本作で第10回小学館文庫小説賞を受賞し、デビュー。
物語の概要:

 「24時間365日対応」の本庄病院で働く内科医・栗原一止の前に、新たなベテラン医師がやってくる。彼女の生き方を見て己を見つめ直した一止は、本庄病院を出る決意をする。シリーズ、2年ぶりの最新作。

主な登場人物:

栗原一止
妻 榛名
 
(ハルナ)
松本平の本庄病院の内科医。“引きの栗原”渾名。30歳。
妻の榛名は山岳写真家。明るくて優しい。
御嶽荘の住人。
本庄病院の医師たち

・院長 本庄忠一 “サンタクロース”渾名。
・事務長 
・内科部長 大狸先生(本名板垣)
・外科部長 甘利先生
・砂山次郎 栗原と大学時代の同期。巨漢の外科医。
・進藤辰也 栗原と医学時代からの同期。東京の病院を退職し、今年4月から本庄病院に。血液内科医。
<看護師たち>
・東西直美 第3病棟の主任看護師。頼りになり、機転の利く看護師。
・水無  2年目の看護師。
・外村師長 救急部のかなめ。

小幡奈美 大狸先生の引きで新しく赴任の消化器内科の先生。
北海道札幌稲穂病院12年のベテラン。ERCP分野でトップクラスの病院。大学の医局を辞め札幌稲穂病院に行った理由は?
御嶽荘の住人 ・男爵 絵描き。
・屋久杉君 農学部の学生。1ヶ月近く旅に出て音沙汰無し。
患者たち ・開田ツネ(92歳)肺炎で入院中。口が悪い。妹の節子さん(88歳)が引き取って面倒見るというが。
・横田 肝性脳症の患者。黄疸ひどいがアルコールを手放さない。
・島内耕三
(82歳) 膵癌の疑いのある患者。若い頃は組の者。孫の賢二は手術は負担が大きく患者を痛めたくないと。
読後感
 2年ぶりの新作ということで「神様のカルテ」に期待して読み出すと、第一話あたりは登場する人物たちを振り返り紹介するような内容で、以前のような感動が今回は得られないのかなと危惧していた。

 第三話(冬銀河)あたりから砂山次郎の移動の話、新しく迎えられた希望の星のようであった小幡先生の不穏な噂、82歳になる島内という患者のことで物語に大きな変化を与え始める。
 特に医師としての生き方にどういう医師を目指しているのかというテーマは、その人の哲学が大きく左右されるもので、小幡先生の栗原一止に対する厳しい言葉「医師たるもの、無知であることがすなわち悪」、「私、栗原君には失望したのよ」に栗原医師は衝撃を受ける。そして極めつけは、島内耕三老人に対する手術の実施決定と結果に、いよいよ栗原医師は追いつめられる。
 また、院内での人間関係のやりとりは相変わらず、ユーモアと暖かいもので溢れ、悪者らしき人物が登場しないのもほっとする作品である。

余談:

 医師の日頃の扱かわれ方と問題が起きたときの責任の重さのギャップ、これは時代がますますギャップが広がる方向に向いているのは悲しいこと。また最先端の技術を身につけることを選ぶか、地域の医者として患者の側にとどまってそちらの技術を身につけるのを選ぶか、これもまた難しい選択肢であろう。そんなことを考えさせる所でもあった。
 栗原先生と小幡先生の対決は“医者は総合力で勝負”でこの先逆転するのだろうか。 

 背景画はカバー表紙を取り外して出てきた表紙のフォトを。松本城があり、星が輝いている。 

                    

                          

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