中山祐次郎 『泣くな研修医』


              2022-08-25


(作品は、中山祐次郎著 『泣くな研修医』    幻冬舎による。)
                  
          
  
 
  本書  2019年(平成31年)2月刊行。書き下ろし作品。

 中山祐次郎
(なかやま・ゆうじろう)(本書による)

 1980年神奈川県生まれ。 鹿児島大学医学部卒。 都立駒込病院で研修後、同院大腸外科医師(非常勤)として10年勤務。 2017年2月〜3月、福島県広野町の高野病院長を務め、その後、同県郡山市の総合南東北病院外科医長として勤務。 資格は消化器外科専門医、内視鏡外科技術認定医(大腸)、外科専門医、感染管理医師、マンモグラフィー読影認定医、がん治療認定医、医師臨床研修指導医。 日経ビジネスラインやYahoo!ニュース個人など、多数の媒体で連載を持つ。 著書に「幸せな死のために一刻も早くあなたにお伝えしたいこと――若き外科医が見つめた「いのち」の現場三百六十五日」(幻冬舎新書)、「医者の本音」(SB新書)がある。

主な登場人物:

雨野隆治
(あめの・りゅうじ)
父 隆造
母 
兄 裕一(没)

鹿児島出身、東京下町の総合病院の研修医1年目、25歳。
佐藤先生に負けないような、それでいてもっと優しい医者になってやる決意。
・両親は鹿児島で「薩州あげ屋」を営む。
・兄の裕一 プロローグで異変の描写。

佐藤玲

隆治の外科の直属の上司。医師歴4〜5年の後期研修医。
美人で気が強そう。

岩井 外科の上司。
須郷(すごう) 外科部長。
吉川 外科病棟のベテラン看護師。愛嬌のある顔、優しげな微笑み。
川村蒼(そう) 隆治と同じ1年目の研修医。東京都内の私立大学医学部出身。
[患者]
山下拓磨 父親が運転する車の交通事故で瀕死の重症患者、5歳。
隆治が当直の夜、救急外来で運び込まれてくる。
腹痛の中年男性 主訴腹痛で救急外来に。
絢(あや) 14歳の女の子、右下腹部痛訴えの救急外来患者。
イシイ ステージWのガン患者、25歳男性。
はるか 川村の誘いで隆治が合コンにでたとき知り合った彼女。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 雨野隆治、25歳、外科研修中。 今日も家には帰れない、帰らない。 生活保護で認知症の老人、同い年で末期がんの青年、交通事故で瀕死の重傷を負った5歳の少年…。 新米医師の葛藤と成長を圧倒的リアリティで描く医療ドラマ。

読後感:

 主人公の雨野隆治は東京下町の総合病院の、1年目の研修医。 患者に対し医師として接するには知識も経験も乏しいため、医師の経験4〜5年佐藤玲なる美人医師の指導を受けて患者に対することになる。 佐藤は意志も強く、厳しい言葉を浴びせてくるので、質問することもままならない。 そんな新人研修医の症例では、交通事故で救急搬送されてきた5歳の子供(拓磨)に対する処置に難航すると共に、岩井医師の判断や、両親に対する説明に納得いかない点もあるが、言い出すこともできないもどかしさを感じる。
 自身賢明に患者のことを気遣っているも、連日の泊まり込みでふっと抜けてしまったことで起こる失態に、こっぴどく叱責され、落ち込むことも。

 印象深かったのは、末期ガンのイシイという患者と隆治のふれあい。 しかし甲斐なく自身が初めて看取ることになった心境やいかに。
 対して、5歳の少年拓磨に対し、なんとしても助けたい願いが叶うのか・・・。
 そんな若い新人研修医をベテラン看護師の吉井が、何かと手助けしてくれたり、アドバイスをしてくれるのが救いである。

 吉井の「世の中には二つの嘘がある。 一つは人を欺く嘘。 もう一つは「優しい嘘」人を助ける嘘。 でも、「優しい嘘」を言った人には、大変な重荷がのしかかることになるの。 嘘をついた相手の全部を受け止められるような覚悟がなければ、そして嘘つきとなじられても笑顔で謝れるような気持ちがなければ「優しい嘘」はついてはいけないの」と。
 医師の大変さがしみじみ伝わってきた。


余談:

 テレビ朝日で「泣くな研修医」のドラマがあった。 小説とは研修医の仲間がもっといて、その葛藤もおもしろかったが、小説では気持ちとか感情とかの描写があり、やはり小説も好ましいと改めて思えた。
背景画は、自然いっぱいの素材集がErrorとなって消失してしまったので、背景素材無料のものからに。

           
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