初出 2010年1月に宝島社から単行本として刊行。 本書 2011年(平成23年)1月刊行。
中山千里: 1961年、岐阜県生まれ。花園大学文学部国文科卒業。「さよならドビュッシー」で第8回「このミステリーがすごい」大賞を受賞しデビュー。他の著書に「おやすみラフマニノフ」(以上宝島社)がある。
火事に巻き込まれ、全身に大火傷を負った遥。彼女は逆境に負けずピアニストになる決意をし、レッスンに励む。ところが周囲で不吉な出来事が次々と起こり…。第8回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作。 主な登場人物:
香月遥 父親 徹也 母親 悦子
16歳の高校1年生。私立高校の音楽科への推薦で入りピアノの練習に余念がない。 ・徹也は大手銀行勤務20年、支店長代理。組織の中で能力発揮するタイプ。しかし昨年あたりから破綻の噂、合併話も。
香月研三(叔父)
30代半ば。就職も結婚もせず、マンガ家を目指している。 玲子叔母さんは昨年なくなる。
2年前突然意識失い、脳梗塞で下半身に後遺症、車椅子生活に。 不動産会社社長、資産家。会社業務は携帯一本で、趣味の模型作りに没頭。(徹也、玲子、研三の父親)
片桐ルシア 母親 玲子(旧姓香月)
インドネシア国籍の、遙と同い年の従姉妹。遥とはクリスマスから正月3が日の10日間を日本で過ごすのが年中行事。 叔母にあたる玲子さんはルシアが先に日本に来ていた12月26日、スマトラ沖地震でなくなる。香月家の養子になることに話が進む。
音楽科の意地悪三人娘。 ・君島有里 ・時坂恵 ・涼宮美登里
読後感: 音楽の世界とミステリーの世界をドッキングさせた新鮮みがいい。読んでいる内にミステリーはどうなったかなんて関係なく、遥のコンサートへの執念、岬のピアノを教える立場での色々な話、音楽に対する接し方とかのアドバイスの興味。一方で推理力の片鱗を見せながらの展開。 ラストのコンクールでの演奏時の盛り上がりとその後のミステリーの結末の意外性に“なんとしてやられたぁ”との感が否めない。いやはやそうだったのか。 遥を襲った犯人捜しについてはどうも近親者の範囲内での行為と思われ、まあこの辺かなとは思っていたが、その殺人の根拠が思わぬ意外性にあったとは。さらに母親殺しの元もそのことにあったとは。想像していなかっただけにしてやられた。
中山七里という作家のことが気になった。音楽に関しての描写の迫力、そういう関係の著書が多いのか? そうでもあり、違うようでもあり・・。 これと同じようなことが以前読んだ絵にまつわる作品のことを思った。原田マハの「楽園のカンバス」という作品。美術に関する仕事に携わっていた経歴からなるほどと。 絵のことや、音楽のこととか読書で色んな分野の話に交われることも楽しい。
背景画はドビュッシーの「月の光」のイメージから。