初出 2010年10月単行本「おやすみラフマニノフ」(小社刊)を加筆修正。 本書 2011年(平成23年)9月刊行。
中山七里:(本書より)
1961年、岐阜県生まれ。花園大学文学部国文科卒業。第8回「このミステリーがすごい!」大賞にて大賞受賞、2010年1月「さよならドビュッシー」にてデビュー。他の著書に「連続殺人鬼カエル男」(すべて宝島社文庫)がある。最新刊は「魔女は甦る」(幻冬舎)。現在会社員。
主な登場人物:
ヴァイオリン専攻。愛知音大ヴィルトゥーソ科4回生、12月生まれ。 バイト先は矢場町老舗のとんかつ屋。秋の恒例の定期演奏会でのコンマスの役を獲得。
物語の概要:(図書館の紹介記事より。)
音大生の晶は初音とともに、プロへの切符をつかむため練習に励んでいた。しかし完全密室の空間で、2億円のストラディバリウスが盗まれ…。ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番」が響く時、衝撃の真実が明らかになる。 読後感: ストラディバリウスのチェロが忽然と密室から消えた。その謎解きがメインかと思いきや、愛知音大の秋の定期演奏会での学生の選抜代表の選出、オーケストラの練習、そしてメンバー間の色々なトラブルがあたかもミステリーを置き去りにした完で感じで進んでいく。 しかも音楽絡みの内容や演奏の詳細描写に費やされる。 臨時講師の岬洋介の登場も推理の能力はもちろんのこと、音楽に対する能力もとてつもなくて随所に現れて見事に処理をしていく様は「さよならドビュッシー」でも証明済み。 今回は城戸晶なる人物が主人公の位置づけで学長の孫に当たる柘植初音とのお互いをいたわり合う様子を見せながら、気性の激しい下諏訪美玲や舌禍の麻倉雄大らと抗いながら、オーケストラのコンマスの役をこなす辺りが興味深い。 ラストに来て犯人の目的、動機が岬洋介によって推論されるが、その前の演奏会前に明かされる犯人?らしき言葉が演奏会後の様子を暗示させる辺りどうして?と読者を不安にさせる。 果たして結果は??? それにしても演奏の様子を克明に描写しているシーンは、音楽を余り解さない自分としてはそんな風に理解して聞けたら音楽も素晴らしいなんだろうなあと思ってしまう。
中山七里の作品を2年ほど前に「さよならドビュッシー」で読んでいた。この時は音楽にまつわる新しい境地とミステリーという世界の話として面白かった。そして”このミステリーがすごい”大賞を受賞していた。やはり最初にこういう作品を体験すると驚きも一段とあるものだが、同じような物が続くと受け止め方もだいぶ違ってくる。xx賞受賞後に続く後続の作品が以下に難しいものか。 でも又傑作が飛び出すとこれはすごいと思う。そんな作家になって欲しいものである。