物語の概要:(図書館の紹介記事より。)
施設で育ち、今は准看護師として働く弥生は、問題がある医師にも異議は唱えない…。「きみはいい子」で光をあてた家族の問題に加え、今作では医療現場の問題にも鋭く切り込んでいく。新境地となる書き下ろし長編。
読後感:
以前ドラマで見たことがあるこの作品。はたして原作はどんなだろうかと思って。ちょうど著者の作品で「きみはいい子」と「みなそこ」を読んだ後だったので是非読みたかった。
読んでみるとどんどん読み進んでいけるとともに、藤堂師長のイメージと、ドラマの鈴木保奈美の師長のイメージがぴったりあっていることに感動。
小説で読むと弥生の生い立ちもつぶさに想像できるし、師長とのやりとりも素直に胸に染みこんできて震える思いが深かった。
一宮シメの生い立ちや娘さんの立場を思うと、師長の最後の言葉は素晴らしいとしか言い様がない。菊池老人と弥生の交わりもすなおに心に響き、日頃入院には縁のない世界ではあるが、こういう病院なら良いなあと思ったり。
印象に残る場面:
藤堂師長のわたしに言った言葉:
・大野先生のことを「大野先生は自信のないかたなのね。」「自信がないからためしてるのね、患者さんに。」「あなたにもためしているのよ。俺でもいいのかって。あなた試されてるのよ、大野先生に」
「気にしなくていいのよ。あなただけじゃないから。だれも文句言わないんでしょ、大野先生に。この病院、みんなためされてるのよ。自信のない俺さまに」
・師長が楠山患者のことを家族の方に真実を告げることを避けるため引き留めたことに:
「あなた、かわいそうなひとね。」「あんな先生しか知らないんでしょ。」「患部とカルテしか見ない先生。自分の思い込みで治療して、失敗しても認めない。患者のことも、看護師のことも、自分と同じ人間だと思ってない。患者は自分の言う通りにしていればいいし、看護師は自分の補助さえしていればいいと思ってる。」
「あなた、ずっとあの院長とやってきたんでしょ。ほんとにかわいそうね。」
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