読後感:
前半はスリの様子と子供が母親の指示に従って危うい万引きを繰り返す場面で僕がアドバイスをしたり止めさせたりと親子の境遇が感情移入に誘いこまれる。
そんな中、後半に入り、素性の判らない謎の男の出現で、スリ仲間のつながり、子供の親子への心配、昔の女のことがからみ、奇妙な指示に反発しながらも仕事をやり遂げようと・・・。
スリをする人間に対して同情などすることはないが、子供に対する親としての役目、父親という感情での行動が何故か胸に人と迫ってきて、感情移入させられる。
そしてラストの僕の運命は・・・。子供の運命は? ちょっと理解できないけれど・・・。
あとがきに著者が記していることで著者のベースが少し理解できる。すなわち、「僕の書く主人公は様々な意味で僕の分身である。・・スリという反社会的な存在に好意を感じるのは、僕の性質なのでご容赦願いたい。しかしながら、元々そういう性質でなければ、僕は小説を書いていない。押しつけられるような明るさはいらない。全てに満たされているのなら小説は必要ない。この小説のテーマ性は、とても僕らしいと思った。」と。
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