中村文則著 『土の中の子供』







                    2014-02-25

 (作品は、中村文則著 『土の中の子供』 新潮社による。)

          

 初出 土の中の子供「新潮」 2005年4月号。(第133回芥川賞受賞作品)
    蝉の声   「新潮」 2004年1月号。
 本書 2005年(平成17年)7月刊行。

 中村文則:
 1977年、愛知県生まれ。福島大学行政社会学部応用社会学科卒業。2002年「銃」で新潮新人賞を受賞してデビュー。04年「遮光」で野間文芸新人賞を受賞。05年「土の中の子供」で芥川賞を受賞。その他の著書に「悪意の手記」「最後の命」「何もかも憂鬱な夜に」「世界の果て」がある。

主な登場人物:

半年前教材のセールスの仕事を辞め、今はタクシーの運転手を一応やっている。両親を幼いときになくし、遠い親戚に引き取られるも・・・。
白湯子

教材のセールスをしていたとき、パートの事務員をしていたが、私が辞めたときに同時に辞める。飲み屋で再会。
母親のことを大嫌い。


物語の概要:
(図書館の紹介文より)

施設で育ち、養子として引き取られた親戚から暴力を受け続けた27歳の主人公。彼は恐怖に感情が乱され続けたことで、恐怖が癖のように身体にしみつき…。第133回芥川賞を受賞した表題作ほか1編を収録。

読後感:

 作品の最初の段階で、自暴自棄的な性格、公園の脇の自販機の前にたむろするバイクの若者達に煙草の吸い殻を投げつけて恐怖のふるえを感じたり、妊娠して死産の白湯子との関係にしろ何となく取っつきにくい主人公。
 次第に主人公の生い立ちが判ってくると何となくそこに至った性格が判るような気もするが所詮理解に苦しむ。

 しかし最後の方で表題の「土の中の子供」という表現、両親を幼くして亡くし、廻され回され遠い親戚の元で虐待を受けた心の傷痕がこのような人間を創り上げてしまっていることの哀れさが伝わってくるようだ。
 芥川賞作品と言うことで選評をやはり調べてみたくなる。
 作品としてみた場合描き方、表現に重きを置いた所はやはり芥川賞的感覚と。

 印象に残るのは、屋上から物を落とし地上に落ちるまでの描写はどうしてこのようなことを考えたり、感じたりするのか。やはり著者の作家としての哲学のようで寄りつきがたいというところかな。


余談:
 

 この著者の作品、やはり前述(「掏摸」)の著者のあとがきにある言葉を理解していると納得できると再認識。
 背景画は、本書の内表絵を利用。