読後感:
「桐畑家の縁談」
なんともすっとんきょう(?)な家庭の桐畑家。でも何とも暖かいというか、居心地が好さそうというか、それぞれが個性的で一般人離れしている姿にほっとする。
なかでも27歳にして独身の露子の性格がおっとりとしていい。さらに風変わりでとても結婚なんか考えられそうもない妹が、さっさと結婚を決めてしまって大いに戸惑っている姉の露子さんはいじらしいやら、脳天気さがたまらなくいい。どうして結婚できないのか。
そうして姉妹の関係もすごくユニークでほほえましい限り。
佳子さんは小さい時はイジメられっ子、存在感などあれほど希薄な彼女が、高3では黒人の彼氏を連れてきたり、色気もなく愛想のない妹がどうしてと姉は戸惑う有様。
日本語学校の事務員として働く佳子さんが、いま交際のお相手は台湾青年のウー・ミンゾン。そして「結婚をします」宣言。こんな彼女に開花させたのは誰?。
露子さんはというと、三度の就職先を辞めて、今は妹が自活する部屋に居候の生活。小柄で愛想が良く、聞き上手の露子さんはお見合いをしても大抵一度で気に入られるのに、片っ端から断っている。長く付き合っている渡辺邦男との仲はというと・・・。
果たしてどうなるのか。
親が親なら子供も子供。桐畑家の家庭はまったくもってハチャメチャ家族の集まりか?
「花桃実桃」
43歳の花村茜、年の割に考え方が若々しくて大人びているのか、若い女性とも思えてきてとても年相応には見えずの不思議な性格。でもすごく好ましい性格でこんな大家さんのいるアパートなら住んでみたくもある。
住人がまたえらく個性的で、変な人ばっかり、大家という立場では、困った住人でもあり気に入ったことも。話はほほえましいやら、ジンとくるところもありおもしろく読ませる。
“花桃館”の位置が、都会から離れ各駅停車しか止まらない、しかも徒歩15分はかかる。後ろはお寺で墓石を眺め、幽霊も出る(?)景色の好い(?)車が入れないから交通事故も起きない草花木に溢れた好物件(?)。9戸の内3戸も空きがあり不動産屋の親父は喰えない親父。
ゆるさが住み心地満点との評価も。
大家家業に精を出すのか、はたまた人生一人で大家家業で朽ちていくのか?その結末は・・・。
◇ 印象に残る表現:(「花桃実桃」より)
・バーテンダーの名前の由来(尾木くんが茜に):
「バーテンダーの名前の由来は、バーのテンダーなんだ。テンダーは優しいって意味でね、人の涙を自分の涙と感じる能力から来る言葉だそうだ。自殺を考える人が人生最後に立ち寄るのがバーで、そういう人に旨い酒を出すのがバーテンダー」
・「人間(じんかん)いたるところ青山あり」 このことわざの意味は「死に場所はどこにでもある」。人間は世間の意味、青山は墓場のこと。
・茜、尾木くんから福島行きを誘われて後、あれこれ考えてとりとめなく口走る
「人間にもいろんな人がいて,実が小さい人もいるじゃない? でもねえ。どっちがどうって話じゃないと思うのよ。花や実だけじゃなくてね、ジャガイモみたいに、重要なのは地下茎って人も、きっと人間の中にもいるわよ」「花も実も地下茎もっていかないとしたら、自分にとって大事なものが花か実か地下茎か、それともそれ以外の何なのか、見極めて」・・・・
・石の上にも三年、点滴岩を穿つ(うがつ) 点滴とは雨だれのこと
|