印象に残る場面:
小説(=もの)を書くとは・・・を考えさせるヒント
◇上田孝夫の作品に対して、若い編集者の批評
「起承転結はそれなりにしっかりしている短編なのだが、人間存在の真実に触れる一言半句が見あたらない。悲しみを描いていながら、どこか突き抜けた明るさが必要なのだが、それもない。要するに駄作である。」
◇「小説っていうのは昔話のようなもんでありますか。ふんとの話でありますか、うその話でありますか」というおうめ婆さんの問い対し、石野小百合の言葉
小説とは阿弥陀様を言葉で作るようなものだと思います。
・・・
「わしゃこの歳まで生きて来ると、いい話だけを聞きてえであります。たいていのせつねえ話は聞き飽きたもんでありますからなあ」おうめ婆さんは文章をかく二人に小説のあるべき姿に関する説教を垂れた。
◇「あのお婆さんのなにげない言葉の重みには勝てないわよ」
読後感:
読む一行一行がなにかすごく大事に読みたい感じをいだかせる。そこに書かれている言葉一つひとつから、素朴で、やさしくて、気持ちをゆったりさせる、生きていることの幸せを感じさせてくれる、そんな雰囲気が伝わってきて、こんな作家が居るんだと感じた。
どうしてなのかなあと思った。それは、信州の田舎の自然の風景の描写に、90云才のおうめ婆さんの何気ない言葉(それが年を重ねてきて、素朴で純な人の、飾らない、心から出た言葉故)に、心を揺さぶるものがあるからとおもう。
・この本を読んでいるとき、至福の時を感じた。
|