長岡弘樹著 『 傍聞き 』
 



 

              2016-06-25



(作品は、長岡弘樹著 『 傍聞き 』   双葉社による。)

           
 

 初出  「小説推理」
     迷い箱   2007年6月号
     899   2007年10月号
     傍聞き   2008年1月号
     迷走     2008年8月号
 本書 2008年(平成20年)10月刊行。

 長岡弘樹:(本書より)

 1969年山形県生まれ。筑波大学卒。団体職員を経て、2003年「真夏の車輪」で第25回小説推理新人賞を受賞。2008年「傍聞き」で第61回日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞。その他の著書に「陽だまりの偽り」(双葉文庫)がある。

主な登場人物:


<迷い箱>
設楽結子 更生保護施設「かすみ荘」の施設長。他に職員2名。
碓井章由(あきよし) 前科持ちの55歳。今日から飯塚製作所の社員寮に入ることになっている。
佐藤潤二 盗癖のある住人。
飯塚徹 自動車部品を作る中小企業、飯塚製作所の社長。設楽結子の幼なじみ。
<899>
諸上将吾 室江市東倉出張所消防署勤務、司令補。
笠間隆人(たかひと) 諸上の四期後輩の消防士。4年ぶりに部署同じに。
阿木 小隊長
新村初美

諸上のアパートの隣家に住む。赤ん坊(4ヶ月)と二人暮らし。
駅前の蕎麦屋で働く。

<傍聞き> (かたえぎき)

羽角啓子(はずみ)
娘 菜月

杵坂署強行班係刑事、主任。窃盗犯係から頑張って強行班係に。通り魔殺人事件を追っている。
夫は強行班係の刑事だったが逆恨みで車に轢かれ他界。
娘の菜月は小学6年生。生まれつき怒りっぽく一度腹を立てるとしばらくの間何も喋らない。

留置管理課 ・伊丹巡査部長。 角顔の男。
・斉藤巡査 若い警官、美形、暮らしぶり派手。
羽角フサノ 羽角啓子の近所の八十過ぎの年寄り。この付近羽角の苗字が多い。

横崎宗市
(ネコ崎と呼ばれる)

元妻へのストーカー行為と傷害でかって啓子が手錠をかけた男。目の下に大きな傷。
<迷走>
蓮川潤也 柿沼市消防本部所属の救急救命士、33歳。1週間先には室伏佳奈と結婚する。救急南1に乗車、室伏隊長とは初めて組む。

室伏光雄
娘 佳奈

救急南1に乗車の隊長。
娘の佳奈 交通事故で車椅子生活。

永野 救急南1の運転手。
葛井(くずい) 被害者、55歳後半。腹部刺され出血。襟に銀色のバッジ(菊の花びらをあしらった意匠)がついている。
増原和成 開業医の外科医。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

巧妙な伏線に緊迫の展開、そして意外な真相…。第61回日本推理作家協会賞短編部門を受賞した表題作を含む、全4編を収録した珠玉のミステリー短編集。ミステリー界に新星誕生。

読後感
  

 4話とも読み出すと一気にのめり込んでしまうほどに引き込まれてしまう。ミステリー的であり、なおかつ惹かれてしまう内容に。

<迷い箱>は物を捨てるのを迷ったら<迷い箱>に入れる。そしたら5,6日で捨てられるというアイデアがキーになっているお話。物ではなく別の物が伏線となるのだけれど。

<899>は消防での符丁言葉で要救護者を指し、一歳未満の乳児を助け出すのだが・・・。ここでも伏線としてあるのが若い消防士がレンチを無くしたことに諸上が反省を促すために3日間ほど隠しておくのだが・・・。

<傍聞き>は漏れ聞き効果で相手から直接伝えられると本当かなと疑ってしまうけれど、同じ話を相手が他の誰かに喋っていて、そのやりとりを側で聞いたらころっと信用してしまう習性がキーになっているお話。啓子と娘の菜月親子のやりとりもなかなか面白く最後はほっこりとした気持ちに。

<迷走>は救急救命士にまつわる話。救急搬送する人物が自分の妻となる女性に車椅子生活を起こさせた裁判の関係者であることと引受先への搬送に関わる緊急状態でのやりとりがミステリアスで隊長の行動と被害者の状態が緊迫感あふれる描写で展開する。
 感情移入できる点では前記3話とちょっと自分的には下がる感じ。

 

  

余談:

この作品と同じように短編で読んでいる内にぐいぐいと引き込まれる小説ですぐに思い出せるほど印象深いのが横山秀夫の「動機」と森沢明夫の「虹の岬の喫茶店」である。
 やさしくすっと心に入り込んでくる表現で琴線に触れる内容がぐっと読者を掴んで離さない。そんな作品に出会ったときはやったあと叫びたくなる。

背景画は、清流をテーマに。(自然いっぱいの素材集より)

                    

                          

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