物語の概要:
出だし部分は、政子が婚期におくれた心の焦りや、父が都から自分と同い年の新しい妻(牧の方)を連れ帰った反発もあり、恋文にさそわれて蛭が小島に住む頼朝の許を訪ね、はじめて愛のよろこびを覚えるところからはじまる。 その後頼朝に別の女がいると聞き、一時は父のすすめる代官山木兼隆との縁談を受け入れたものの、頼朝への思慕を断ち切れず、兄三郎等の協力を得て家を抜け出し、伊豆山権現に参拝する頼朝の許へ走る。 さらに、頼朝が平家打倒の兵を挙げ、その敗北、頼朝の行方知れず、幼い子大姫を抱えながら、夫の無事を祈りつつ、過ごすところは最初の部分のクライマックスとなる。
やがて頼朝が鎌倉に入り、御台所として生活を送るようになってからも、様々な試練がまっている。 木曽義仲の長男、義高と大姫の幼い恋を引き裂くことになって、大姫と政子の絆は断ちきられてしまう。 不幸は更に続き、大姫に続いて夫を喪い、さらに二女の三幡に逝かれ、長男頼家とも心が通わなくなる。 頼家の専横をおさえるために政子は、尼御台として政権を掌握するが、それも夫の遺志を生かして幕府を維持するための懸命な努力の現れだった。
最後に三代将軍実朝を暗殺した公卿(二代将軍頼家の次男)の死を知らされた政子が、何故このような恐ろしい終末を迎えねばならないのか、六十年の間、自分は夫を愛し、子供をいとしんで来たのに、なぜ子供達は私のそばをすり抜け、不幸のかげを引きながら死を急いでいったかを思い―――これが私の生きたということなのかと自ら問う。
|