主な登場人物:
私 |
小説家。初期の頃は叙情詩をさくしていた。 |
折見とち子 |
出版社に勤務の三十に近い女性記者。 |
物語の概要:
有為の人間に不必要な馬鹿の性格悉く(ことごと)く役に立って、衣食に事足りる事を得る小説家が、燎欄の衣装を着用した一尾の朱いさかなのことを書いて、私の知った限りの女達を振り返る小説を書こうとし、その装本の表紙に一尾の金魚の魚拓を思い立つ。突然一人の童女の顔(折見とち子)を思い浮かべ魚拓の制作を依頼する。
読後感:
NHKテレビドラマで「火の魚」を2度みた。 最近(9/22)のは再放送でモンテカルロ・テレビ祭ゴールドニンフ賞他色々な賞を受賞したものである。 内容も好ましく、原作が室生犀星ということで原作を読みたくなる。 図書館から手にしたものは、火の魚本9編の短編小説集であった。
原作は作家が書いた作品の装丁に空から頭を突っ込むようにして海に降下していく、さういう精神力を持った魚拓が欲しいと折見とち子に頼んで、頼まれた折見が「わたくしは生きている金魚を殺せるような恐ろしい女ではございません」と手厳しく作家に詰問する姿があった。 ドラマの脚本では戸惑いながらも生きた金魚を滅し魚拓作業に取りかかっている。
ドラマの脚本というものと原作のありかたがこの作品の場合魚拓の作る祭の思いというものが小説では詳細に描かれているが、ドラマになると見手が理解できるものかなかなか難しいところであろう。 一般に原作に忠実に描いたドラマもあれば、芯の所を利用して独自の展開を見せるものもあるし、どちらがどうというものではないが、今回のドラマは作家と編集者の交流が時にユーモラスさも加わり、好ましい印象を受け、2度も見てしまった。
浜辺に描いた龍の絵、影絵の美しさ、病院に見舞いに沢山の真っ赤なバラ束をかかえて病人の折見を見舞うシーンなど印象に残る場面がすばらしかった。
そして原作の魚に関心を抱く作家、そして作品の表紙に金魚のこんな思いを表す魚拓を師事する思い、短い文章の中に作家と編集者の間の関係を表している小説と両方感心できたのはいい想い出である。
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