物語の内容:
そのひとの横顔はあまりにも清洌で、凛としたたたずまいに満ちていた。 19歳の予備校生の“僕”は、8歳年上の精神科医にひと目惚れ。 高校時代のガールフレンド夏姫に後ろめたい気持はあったが、“僕”の心はもう誰にも止められない―。 第6回「小説すばる」新人賞受賞作品。みずみずしい感性で描かれた純愛小説として選考委員も絶賛した大型新人のデビュー作。
物読後感:
先に「天使の梯子」を読んで後半部分で謎が解けたが、その後この「天使の卵」を読み出してみて、まるで「天使の梯子」の主人公の俺が「天使の卵」での僕の歩太であることにふと錯覚を起こしかけた。そうなんだ、「天使の卵」が最初の作品で、「天使の梯子」は10年後に生まれたものだということに遅まきながら気が付いた。
「天使の梯子」である程度の事情が分かっていたのでこの作品を読み出すと、最初っからぐいぐいと引き込まれてしまった。そして何とも言えない清新さに心を打たれる。
19歳の歩太が9歳年上の春妃に一目惚れ、今まで付き合っていた夏姫に対しては別に嫌いではないが春妃にひかれてしまう。恋とはそういうものと判っていても、「天使の梯子」を先に読んだので、夏姫がどうして歩太のことに世話を焼いていたかがよく理解できた。
それにしても言ってしまった言葉の重さ、後悔の重さがずっしりと残る。
|