村山由佳著 『天使の卵』



 

              2010-03-25



 (作品は、村山由佳著 『天使の卵』   集英社による。)

               
  

 初出 「小説すばる」 1993年9−12月号
 本書 1994年(平成16年)1月刊行
 
第6回小説すばる新人賞受賞作品。

 

 村山由佳: 

 1964年東京都出身。立教大学文学部日本文学科卒。不動産会社勤務、塾講師などを経験したあと、作家デビュー。恋愛小説を書くことを得意としている。
 

主な登場人物:


一本槍歩太(僕) 浪人して美大を目指す19歳の受験生、電車の中で出くわした春妃に一目惚れ。高校3年間同じクラスでそれまで付き合っていた斉藤夏姫に別れようと切り出し、夏姫のショックのありさまに戸惑う。春妃に絵のモデルになってくれるよう頼む。
五堂春妃(ごどうはるひ) 親父の精神科医の先生。夫の五堂とは18歳の時に結婚、夏姫の姉で歩太より9歳も年上。男の人を好きになって泣いたり、悩んだりするだけの気力は、もうどこにも残っていないと。
斉藤夏姫(なつき) 一本槍歩太の気持ちが分からないと姉の春妃に相談する。

物語の内容: 

 そのひとの横顔はあまりにも清洌で、凛としたたたずまいに満ちていた。 19歳の予備校生の“僕”は、8歳年上の精神科医にひと目惚れ。 高校時代のガールフレンド夏姫に後ろめたい気持はあったが、“僕”の心はもう誰にも止められない―。 第6回「小説すばる」新人賞受賞作品。みずみずしい感性で描かれた純愛小説として選考委員も絶賛した大型新人のデビュー作。

物読後感
 

 先に「天使の梯子」を読んで後半部分で謎が解けたが、その後この「天使の卵」を読み出してみて、まるで「天使の梯子」の主人公の俺が「天使の卵」での僕の歩太であることにふと錯覚を起こしかけた。そうなんだ、「天使の卵」が最初の作品で、「天使の梯子」は10年後に生まれたものだということに遅まきながら気が付いた。

「天使の梯子」である程度の事情が分かっていたのでこの作品を読み出すと、最初っからぐいぐいと引き込まれてしまった。そして何とも言えない清新さに心を打たれる。

 19歳の歩太が9歳年上の春妃に一目惚れ、今まで付き合っていた夏姫に対しては別に嫌いではないが春妃にひかれてしまう。恋とはそういうものと判っていても、「天使の梯子」を先に読んだので、夏姫がどうして歩太のことに世話を焼いていたかがよく理解できた。
 それにしても言ってしまった言葉の重さ、後悔の重さがずっしりと残る。



  

余談:

 最近読む作家が何となく女流作家が多いのかなあと感じてしまう。はたしてどういうものだろうか? 別にこだわっているつもりはないのだが・・・。作家の人の男女の割合ってどうなっているのだろうか?ふと思ってしまう。
 

 背景画は、本書の内表紙のフォトを利用。

                    

                          

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