村山由佳著 『天使の梯子』



 

              2010-02-25



 (作品は、村山由佳著 『天使の梯子』   集英社による。)

               
  

 初出 「小説すばる」 2004年9−11月号
 本書 2004年(平成16年)10月刊行

 

 村山由佳: 

 1964年東京都出身。立教大学文学部日本文学科卒。不動産会社勤務、塾講師などを経験したあと、作家デビュー。恋愛小説を書くことを得意としている。
 

主な登場人物:


古幡慎一(俺) 5歳の時両親が離婚、どちらが引き取るかもめた時母方の祖父母に引き取る。 8つも年上の夏姫さんに恋心を抱いているが、なかなか心を射止めることが出来ないようでもあり、心を開かれているようでもあり・・・。
ばあちゃん 俺を育ててくれたばあちゃん、慎一を引き取り祖父母でタカノ理容店を営む。 祖父は慎一が高2の時胃ガンでなくなる。 ばあちゃんはせっかちでなにかと俺のことについて口出しをする。76歳。
斉藤夏姫(なつき)

高校1年生の時の国語の先生。 2年になる時突然辞める。
それから5年経って、バイト先のカフェで夏樹先生を見かける。 29歳になる。 心に傷を持っている。

一本槍歩太 夏姫との仲は恋人のようでもあり、夏姫のほうがなにやら世話を焼いているようでもあるが・・・。 絵の才能があるが何故かあるときから人物画を描こうとしない。
社長ムニール 塗装店の社長、一本槍を雇っている人の好いパキスタン人。
春妃 夏姫の姉。 亡くなっている。

物語の内容: 

『天使の卵』から10年。歩太・夏姫、29歳。8歳年下の男に熱愛される夏姫…。愛を失った歩太と夏姫は再び愛を取り戻すことができるのか。傷ついた3人が織りなす切ない愛のドラマ。


読後感
 

たまたま「星々の船」とパラに本書を読み進めていたら、「星々の船」に比べなにか薄っぺらな感じを受け、途中で「天使の梯子」の方は間を空けることにした。

「星々の船」が感動的だったのでしばらくこの方は置いておき、時間が立ってから続きを読み出した。
 後半になってばあちゃんが俺の暴言の後、急に心筋梗塞で亡くなり、その後悔で慎一が落ち込んでいくあたりから一気に物語に引き込まれていった。

 夏姫の突然学校を辞めた理由や歩太に絵を描かせたい理由、夏姫と歩太との関係、はたまた慎一との付き合い具合、そして歩太が昔人物画で賞を取ったのに今は塗装職人となり人物画を描こうとしない理由、そんな判らないことがいっぱい。 慎一が歩太の塗装現場を見に行き言葉を交わすことで次第にコミュニケーションをとるようになる過程で解き明かされていき次第にクライマックスに駆け上っていく。 やはり作家の力量だなあと感じさせる。



  

余談:

 「天使の卵」を後から読んで、歩太と夏姫の関わり、歩太と春妃の関係、春妃と夏姫のしこりの原因そんなことが鮮烈に理解された。 これを知ってから「天使の梯子」を読めばまた違った印象を持ったかも知れない。

 

 背景画は、本書の内表紙のフォトを利用。

                    

                          

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