村山由佳著 『永遠』



 

              2012-09-25


 (作品は、村山由佳著 『永遠』   講談社による。)

             
  

 本書 2003年(平成15年)2月刊行。
 
第6回小説すばる新人賞受賞作品。 

 村山由佳: 

 東京都生まれ、立教大学文学部卒業。会社勤務などを経て‘93年「天使の卵」で第6回小説スバル新人賞を受賞。「すべての雲は銀の・・・」「晴れ時々猫背」「約束」等多数。 

主な登場人物:

徹也(21歳)
(俺)

地元埼玉、弥生に対して友達以上、恋人未満の長い付き合い。
一方的に弥生に惚れている。
弥生が向かいの家に引っ越してきた時、徹也は小学1年生。
弥生が引っ越してくる前の年、おふくろは家を出て行って父親と兄との3人暮らし。
父親の職業は酒屋。俺は高卒後、家の酒屋に就職。

吉田弥生
母 葉月
ばあちゃん 卯乃

吉田家は水商売で三代続いた。ばあちゃんの卯乃は85歳、現役を引退した美人の芸者。娘も芸者、その子供が葉月さん。
葉月さんが大学時代に身ごもり、未婚の母で弥生を産んで埼玉に引っ越してきた。弥生5歳の時。
弥生は高校卒業後東京の短大に一人で下宿。

真山悟

吉田弥生の父親。葉月が悟から離れていった理由は・・・。
真山家は由緒ある家柄、母親が反対、心臓を悪くした。そのころ葉月が妊娠。悟は不器用なくせにどこまでも律儀なひと。

物語の概要: 

 内山理名の初主演映画「卒業」のサイド・ストーリー。小説と映画の出会いによって、かつてないコラボレーションが実現。スクリーンでは語られなかった人々の胸のうちを、こまやかに綴る「もうひとつの物語」。

読後感
 

 映画の「卒業」のことは知らないが、この作品俺(徹也)が彼女(弥生)と水族館で待ち合わせて待っている間に、俺の生い立ちや環境、そして友達以上恋人未満の弥生とその母葉月とのつながりや幼い頃の仲良しの切なさが綴られる。
 
 気持ちの揺らぎや心情の吐露が語られる点で、映画のようにせりふや仕草だけでの表現よりも機微が表現できる分、読者に訴えられる所は大きい。
 
 葉月さんが弥生を連れて恋人から離れていったわけ、葉月さんの恋人を思う想いの一途さ、弥生が父親のことをどう思っているかが後半部分で語られるシーン、そういう葉月や弥生を端から見ての切なさがすうっと入ってきて、小説の良さがしみじみ。

印象に残る表現:

「その時ねぇ。私、初めてあのひとがわかった気がした。ああこのひとは、いろんなことに気づいてないんじゃない。何も言わないから鈍いみたいに見えるけど、」

母親の葉月が弥生に伝える言葉:

「ねえ、弥生。結果として失敗しちゃった私が言うのも、今ひとつ説得力に欠けるけどね。あんたもこの先、誰かを好きになるかもしれない。そういう時に、その恋がほんものかどうか、見分ける方法がひとつあるよ」
「―――方法?」
 ささやくような声で弥生が訊くと、葉月さんはにっこり笑って言った。
「そう。『この男は、あたしが幸せにしてやるんだ』って―――そう思えるかどうかよ」
「お母さんは・・・お父さんのこと、そんな風に思ったんだ?」
「うん、思った」

  
余談:

 最近読む作家が何となく女流作家が多いのかなあと感じてしまう。はたしてどういうものだろうか? 別にこだわっているつもりはないのだが・・・。作家の人の男女の割合ってどうなっているのだろうか?ふと思ってしまう。
 

 背景画は、徹也と弥生が水族館の前で待ち合わせの雰囲気をイメージして。

                    

                          

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