村山由佳著 『天翔る』


 

              2013-06-25



 (作品は、村山由佳著 『天翔る』   講談社による。)

             
  

 本書 2013年(平成25年)3月刊行。
 
 

 村山由佳: (本書より)

 1964年、東京都生まれ。立教大学文学部卒業。1993年「天使の卵 エンジェルス・エッグ」で第6回小説すばる新人賞を受賞。2003年「星々の舟」で第129回直木賞、2009年「ダブル・ファンタジー」で第22回柴田錬三郎賞、第16回島清恋愛文学賞、第4回中央公論文芸賞をそれぞれ受賞。著作に「おいしいコーヒーの入れ方」シリーズ、「すべての雲は銀の・・・」、「遥かなる水の音」、「放蕩記」、「ダンス・ウィズ・ドラゴン」など。

主な登場人物:

岩館まりも
父親 蓮司
祖父 秀司
祖母 冨美代

小学5年の時、石本博美から父親の仕事絡みの暴言に騒動を起こし、以降イジメにあう。
母親が男と家を出ていき、そのため父親の蓮司は長距離トラックの運転手を止め、トビ職を選ぶ。
祖父母はアパートの大家で、まりもたちの階下に住んでいる。

大沢貴子

札幌の病院に勤務する看護師。人見知り強く、過去に傷を持つ。
夜勤明けになると志渡の牧場に手助けに。

志渡銀二郎(しど) 北海道石狩で<シルバー・ランチ>という乗馬牧場を営む。

漆原一正(かずまさ)
娘 近藤理沙

<G/E>の芸能プロダクションの社長。会社は二度目の妻と部下に任せ、自らは「テヴィス・カップ・ライド」にのめり込んでいる。
娘の理沙は最初の妻との間の子で、雑誌の編集者。

高岡恭介 富良野近郊で“オーベルジュ”建設の乗馬担当の責任者。その前は志渡と観光客相手のインストラクターとして友人関係であったが、志渡を裏切る行動をして関係は悪化状態。

物語の概要: 

 看護師の貴子は、ある事件から学校に行けなくなってしまった少女・まりもを牧場へと誘う。そこで待ち受けていたのは風変わりな牧場主と乗馬耐久競技という未知の世界だった…。胸ふるえる傑作青春小説。


読後感
 

 馬と言えば宮本輝の「優駿」を思い浮かべてしまうが、本作品は馬と言うよりは人間の方に焦点が当たっている?。しかも岩館まりもという14歳になるかならないかの少女。

 学校でイジメにあい学校に行けなくなってしまう。さらには父親との二人なのにその父親までも亡くすという不幸な子供。そのまりもが近くのマンションに住む美しい女性大沢貴子と出会い志渡の営む<シルバー・ランチ>での新しい世界に踏み込んで色んなことを学んでいく。

 また大沢貴子も忌まわしい過去に引きずられ素直な恋愛関係を結べないでいる。
一方志渡も裏切られた友情に、人間に対する信頼を失いかけている。

 そんな中、エンデュランスという馬と人間の信頼関係が全てを決める耐久レースに情熱を燃やす漆原という人物が、新たな世界に彼らを呼び込んでそんな迷いごとを吹き飛ばしてしまう。

 何となく身近でなく感情移入するには間隙を感じるストーリーではあるのが、残念と言えば残念。
 でもラストのアメリカでのテヴィスカップでの競技の模様はさすがに感動もの。限界を乗り越えるられた後の感動、人も心も大きく成長させる。ちっちゃなことに拘ってくよくよしているのがばからしくなる。そんな経験をしてみたいもの。

  
余談:

 本原稿作成裏話:
 覚え書きを作成しながら読書をするが、この原案を未完成にして次々と読書をしていくと、いざ更新時に原稿を作成する段ではてどうだったかと。特に印象に残ったり、感動した作品は記憶に残っているけれど、普通の印象しか受けなかった作品は記憶を呼び戻すのに困ってしまう。原案をしっかりしたものにして初めてその本を読み終えたとほっとする。覚え書きのノートもすでに63冊目に。

 

 背景画は、作品中の牧場風景をイメージして。

                    

                          

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