村上龍著
                 『限りなく透明に近いブルー』




 

                      2014-06-25



(作品は、村上 龍著 「限りなく透明に近いブルー」   講談社による。)

           

  本書 1978年12月に刊行された講談社文庫を新装版としたもの。

 村上 龍:(本書より)

 1952年、長崎県に生まれる。武蔵野美術大学中退。‘76年に「限りなく透明に近いブルー」で群像文芸新人賞、芥川賞を、’81年に「コインロッカー・ベイビーズ」で平林たい子文学賞、毎日出版文化賞を受賞。小説、エッセイにとどまらず「TOPAZ(トパーズ)」などの映画製作や、サッカー、国際政治、経済に関する著作など、あらゆるジャンルで旺盛な活動を展開している。

主な登場人物

リュウ(主人公)
=僕、俺

東京都福生に住む。リリーからの言葉「リュウ、あなた変な人よ、可哀想な人だわ、目を閉じても浮かんでくるいろんな事を見ようってしてるんじゃないの?うまく言えないけど本当に心から楽しんでたら、その最中に何かを捜したり考えたりしないはずよ、違う?・・・・・通り歩いている人の目をじっと見てごらんなさいよ、すぐ気が変になるわよ、リュウ、ねえ、赤ちゃんみたいに物を見ちゃだめよ」と言わせるところを持つ。
リリー リュウの恋人。昔モデル。
仲間たち

・オキナワ
・レイ子
・カズオ
・ヨシヤマ ケイと同棲? 酔うと人が変わる。金貯めてインドへ行くと。
・ケイ  モデルの仕事。
・モコ
・オスカー、サブロー など


物語の概要(図書館の紹介記事による)

 米軍基地の街・福生のハウスには、音楽に色彩られながらドラッグとセックスと嬌声が満ちている。そんな退廃の日々の向こうには、空虚さを超えた希望がきらめく―――。

読後感

 読んでいると胸くそが悪くなる内容。果たして読み進むべきか、こんなの原稿が書けるかなと。でも村上龍はテレビ東京の「カンブリア宮殿」での場面からは、存在感と好ましい雰囲気、頼もしささえ感じる印象で好感を持っているのだからと。さらに群像新人賞、芥川賞受賞のデビュー作とあるのだから、きっときらっと感じるものがある筈だと信じて読み進める。

 果たして期待通り主人公リュウの独白とも言うべき言葉が。「俺は知ってたんだ、本当はずっと昔から知ってたんだ、やっとわかったよ、鳥だったんだ。これに気付くためにこれまで生きてきたのさ」と。
 さらに「リリー、あれが鳥さ、よく見ろよ、あの町が鳥なんだ、あれは町なんかじゃないぞ、あの町には人なんか住んでいないよ、あれは鳥さ、わからないのか・・・・・・
 鳥を殺さなきゃ俺は俺のことがわからなくなるんだ、鳥は邪魔してるよ、俺が見ようとする物から俺を隠してるんだ。俺は鳥を殺すよ、リリー、鳥を殺さなきゃ俺が殺されるよ。リリー、どこにいるんだ。・・・」
 
僕は絨毯の上にあったグラスの破片を拾い上げた。握りしめ、震えている腕に突き刺した。・・・・・
 血だらけの薄い硝子の破片をポケットに入れて、霧に霞んでいる道路を走った。・・・・
 何度も転び、そのたびにポケットの中のガラスが細かく砕けた。・・・・ポケットから親指の爪程に細かくなった硝子の破片を取り出し、血を拭った。小さな破片はなだらかな窪みをもって明るくなり始めた空を映している。・・・・・
 血を縁に残したガラスの破片は夜明けの空気に染まりながら透明に近い。限りなく透明に近いブルーだ。・・・・

 う〜ん、この表現、今までの錯乱状態に近い情景と対比して、これがこの時代に生きた19歳の若者の感覚に近い物だったのか・・・。
 やっぱり芥川賞を取った辺りの評論を読み、さらにこの本の解説(綿矢りさ)を読んでこれまたなるほどと思わされた。ちなみに「俺は鳥を殺すよ」というこの鳥については解説の綿矢りさが説明している。
 本作品読んでみて良かったの印象である。

余談:

 村上龍がこの作品で芥川賞を受賞したのが昭和51年7月。村上は武蔵野美術大学に在籍で、24歳だった。村上龍の処女作である。
 学生で芥川賞作家になった例は、それまでにもあった。その一人が石原慎太郎であり、もう一人は大江健三郎である。
 石原慎太郎は昭和7年生まれ。昭和31年1月、「太陽の季節」で受賞する。
 石原は一橋大学生で、当時23歳。「太陽の季節」は二作目の小説であるが、芥川賞は初めての候補だった。
「太陽の季節」がすでに文学界新人賞を受けていたのも、村上龍と同じだ。
 小説はどちらも、若者の無軌道な風俗を文学へと定着しようとしたものだ。とある。(ネットより)
 なるほど、そういう時代の推移かと。

背景画は、VHSのタイトルより(ネットより)。映画の作品、監督が村上龍その人とは・・。

                    

                          

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