村上春樹著 『騎士団長殺し』 第2部



              2019-05-25

(作品は、村上春樹著 『騎士団長殺し』第2部   新潮社による。)
             第2部 遷(うつ)ろうメタファー編
          

  本書 2017年(平成29年)2月刊行。書き下ろし作品。

 村上春樹
(本書に記述なし)
 

主な登場人物:


妻 柚
(ゆず)

6年にわたる結婚生活後妻から送られてきた離婚届けに印を押し送り返す。友人が貸してくれた小田原の山の上の家に5月から住まわせてもらい、自分が描きたい肖像画に没頭。
免色渉、秋川まりえ、白いスバル・フォレスターの男の絵を描く。
・柚 別居中の妻は建築事務所に勤務の傍ら、別の男(雨田政彦の仕事仲間)と付き合っている。妊娠7ヶ月と
でも結婚はしないと。

妹 小径(こみち)(没) 心臓に病、13歳で亡くなる。私と二人で山梨の叔父の所に行った時、風穴見学で小さな穴に小径一人入っていった体験あり。

雨田政彦(あまだ)
父親 具彦
(ともひこ)

美大で同じクラスだった、2つ年上の私の友人。認知症の父親が伊豆高原の養護施設にいる為しばしば通っている。具彦の住まいを私に貸してくれた。
・父親の具彦:ウィーンでのに留学から帰国後日本画に転向。一人で山の上の家に籠もって絵の制作に打ち込んでいたが認知症が進み伊豆の養護施設に入っている。
「騎士団長殺し」の絵の作品を天井裏に残していた。

免色渉(めんしき・わたる)

私が住む山の上の家の谷間を挟んで向かい側のモダンな家に住む謎の不思議な人物、54歳。
今度は私に秋川まりえの肖像画を依頼してくる。

秋川良彦
妻 (没)
娘 まりえ

秋川家は大地主、父親の死後後を継ぎ小田原市内で資産を管理。
妻の死後、人が変わったようにさらに内向的になり宗教団体と関わりを持つように。一人娘にも関心示さず。
・妻は良彦より15歳年下。結婚6年後ミツバチに刺され死亡。

秋川笙子(しょうこ)

秋川良彦と笙子は兄妹。まりえの叔母に当たる。
兄の家に同居してまりえの世話をしている。
私が山の上の家で免色渉と引き合わせてから、免色のことに興味を持っているよう。

秋川まりえ

13歳。私の教える小田原の絵画教室に通う女の子。ひとり隠れた道を通り私の家に現れる。この辺りのことをよく知っている。
何かを感じ取る才能を持っている。

人妻のガールフレンド 小田原の私の絵画教室に通う年上の人妻。私と大人の関係を保つ。
騎士団長

イデア。雨田具彦の描いた「騎士団長殺し」の絵にある騎士団長の姿で身長60cmほどの小さな男。この世に姿を現すことが出来るのは一日に数時間程度しか。
騎士団長の姿を見ることが出来るのは私と秋川まりえのふたり。

白いスバル・フォレスターの男

宮城県の海岸沿いの小さな町のファミレスで見かけた人物。
「おまえがどこで何をしていたかおれにはちゃんとわかっているぞ」と告げられているように感じた人物。イデア?、メタファー?
妻の柚から別れ話を告げられ、ショックでひとり車で放浪の旅の途中に出会った。

補足:メタファー:暗喩 ( あんゆ ) ともいい、伝統的には修辞技法のひとつとされ、比喩の一種でありながら、比喩であることを明示する形式ではないものを指す。
(ウィキペディアより)

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 第2部
 渇望する幻想、そして反転する眺望。物語はここからどこに進んでいこうとしているのか…。「ねじまき鳥クロニクル」「海辺のカフカ」「1Q84」、そして更に旋回する村上春樹の小説世界。     
        

読後感:

 どうやら物語は第1部から同じように展開していく。今回の内容は
 ・最大の焦点は「騎士団長殺し」の絵にまつわる背景、何を意味しているかという点。
 ・何かを感じ取る才能を持った秋川まりえとのやり取りおよび、行方不明となった彼女を助けようと私が経験する不可思議な体験。
 ・別れた元妻のユズとの話し合い。
 ・免色と秋川笙子との関係。
 であろう。

 第2部のサブタイトル”遷(うつ)ろうメタファー編”のメタファーという言葉の意味が良く理解できない。
 物語の展開はそれぞれの章の内容は興味深くもあり、さすがに長編であるにもかかわらず、次々と読者を引きつける不可思議なこと、関心になりそうなことが描写されページを繰る手がやまないのはさすが。

「騎士団長殺し」の絵に秘められた雨田具彦が経験した出来事に対し、世の中に喋ることを禁じられ、ある種絵でそのことを表そうとした内容が・・・

 秋川まりえが姿を消して行方不明になったことから、助け出すために、私が経験した不可思議な体験、騎士団長の示唆と行動、そして私を穴から救い出してくれた免色渉の存在に対し、ほっとする緊縛感。私の妻の柚との交流から導かれた結末も読者に勇気というか、暖かさをもたらすものに。
 雨田具彦が息を引き取った時点と私が穴から救い出された時が同じ頃であったことにもほっと。
 やっとこの長編小説を読み終えた満足感が何かやり遂げた思いが残る。
 


余談1:

 文庫本発売の広告に第2部、佳境へとして「騎士団長は本当にいたんだよ。君はそれを信じたほうがいい」この不確かな世界の中で、村上春樹の物語は、孤独な魂をあたため続ける。勇気と想像力に満ちた長編小説。作家デビュー40周年。と。
 確かに勇気を与える寓話の世界のようだった。

余談2:

イデアについて物語の中で秋川まりえに説明しているのがわかりやすいか。
「イデアというのは、要するに観念のことなんだ。でもすべての観念がイデアというわけじゃない。例えば愛そのものはイデアではないかもしれない。しかし愛を成り立たせているものは間違いなくイデアだ。イデアなくして愛は存在しない。・・でもとにかくイデアは観念であり、観念は姿かたちを持たない。ただの抽象的なものだ。でもそれでは人の目には見えないから、そのイデアはこの絵の中の騎士団長の姿かたちをとりあえずとって、いわば借用して、ぼくの前に現れたんだよ。」  
      

背景画は、自然いっぱいの素材集がErrorとなって消失してしまったので、背景素材無料のものからに。

           
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