森沢明夫著
                   『虹の岬の喫茶店』

                         





                     2013-08-25


(作品は森沢明夫著『虹の岬の喫茶店』    幻冬舎による。)

              

本書 2011年(平成23年)6月刊行。書き下ろし作品。

森沢明夫:(本書より)

 1969年、千葉県生まれ。小説、エッセイ、ノンフィクション、絵本と幅広い分野で活躍しており、小説「津軽百年食堂」は2011年春に映画化された。「ラストサムライ 片目のチャンピオン武田幸三」で第17回ミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞。著書に「海を抱いたビー玉」「津軽百年食堂」「青森ドロップキッカーズ」「ラブ&ピーナッツ」「夏美のホタル」など。


物語の背景、概要:

柏木悦子
犬 コタロー

岬カフェの初老の主で元ピアニスト。美味しいコーヒーとお気に入りの音楽でもてなす。店はほとんど通りからは判らないような場所にある。
コタローは3本脚の犬。店までの案内役を果たす。

高田浩司

本職は塗装業。店の隣りにひとりでライブの出来るバーを建てている。
柏木悦子の甥。(妹の祥子が母親で自殺)若い頃は暴走族のリーダー、バンド仲間に入ってから変わる。

<第一章>

大沢克彦(40歳)
妻 小枝子
娘 希美
  (のぞみ 4歳)

陶芸作家、陶芸教室の講師。
妻の小枝子 急性骨髄性白血病に冒されて亡くなる。
葬儀の後娘と一緒に虹探しの冒険に出てこの店に出くわし・・。

第二章>
今泉腱 大学4年生で就職活動中。気晴らしに中古のバイクで遠出でガス欠、やっとこの店に・・。
みどりちゃん 美大の2年生(2年浪人)。月曜日にはここに来てスケッチをを描いている。
<第三章>
泥棒 研ぎ屋。不況で妻や子も失い、初めての泥棒にこの店に入ったが・・。
<第四章>
タニさん 常連客の一人。小さな建設会社の役員、でもリストラでどうやら最後のお別れのためにこの店を訪れたらしい。
<第五章>
セブンシーズン 浩司の若かりし日のバンド仲間達とのこと・・。
<第六章>
その後の岬カフェ、悦子も年を取る。台風が通り過ぎた後・・。

 物語の概要:図書館の紹介より

小さな岬の先端にある喫茶店には、とびきりおいしいコーヒーと、お客さんの人生にそっと寄り添うような音楽を選曲してくれるおばあさんが…。喫茶店での一期一会が人生に光をもたらす、感涙の長編小説。

読後感:

 先に読んだ「あなたへ」がなんとなく映画の宣伝がバイアスになって評価をかさ上げされていた感があったが、本作品は素な感じで読めたせいか、ずっと感動したものであった。
 ごく日常的で、そんな経験とか想像するに難くない事件(?)と言える出来事の中で、この岬カフェの様な存在と悦子さんのような素敵な女性が居てくれたらのメルフェンともいえる世界に、しばし身を置いておきたい感情に満たされ、読書の楽しみをまた味わうことが出来た。
 思い返すと、伊吹有喜著の『風待ちのひと』(ポプラ社)もそんな作品だったなあと。

 6つの章のテーマに、訪れたお客の繋がりが盛り込まれていて、その後の様子が垣間見られるようになっている。なかでも自分の身と重ね合わされるようなシチュエーションの話には、なにか後押しされているようで元気がわき起こってくる。年を取ると人生の先のこと、わびしさを感じる時間もあり、そんな時読書が心の支えになってくれていると感じられることは素敵なことである。
 
 各章では雰囲気にあった音楽を店の主がかけてくれるが、中でも初めて知ることになったが、ケルティック・ウーマンの「アメイジング・グレイス」に夢中になった。
 賛美歌の曲でネットで見ると多くの歌手が歌っている有名な曲で、メロディーはいつか聴いたような懐かしさもある。 

 
余談1:
「アメイジング・グレイス」の英語の歌詞を知りたくて調べたが、途中までは同じでも、色々な歌詞がありそうで、おもしろい。いずれにしても内容は神への感謝の気持ちが歌われている。
 
余談2:
 
背景画を探していたら、本作品のモデルが千葉にあり、NHKのラジオドラマでも放送されたことがわかった。なるほど実在したと言うことである。実際に行き、コーヒーを味わい、会話を交じわせたら一層作品を味わえたかも・・。
 背景画は、この作品のモデルとなった「岬」のブログのフォトを借用して。