森沢明夫著 『あなたへ』
                         




                     2013-07-25


(作品は森沢明夫著『あなたへ』   幻冬舎文庫 による。)

            

本書は、映画「あなたへ」(脚本・青島武)を原案に創作された小説です。
本書 2013年(平成25年)2月刊行。


森沢明夫:「虹の岬の喫茶店」より

 1969年、千葉県生まれ。小説、エッセイ、ノンフィクション、絵本と幅広い分野で活躍しており、小説「津軽百年食堂」は2011年春に映画化された。「ラストサムライ 片目のチャンピオン武田幸三」で第17回ミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞。著書に「海を抱いたビー玉」「津軽百年食堂」「青森ドロップキッカーズ」「ラブ&ピーナッツ」「夏美のホタル」など。


物語の背景、概要:

倉島英二(63歳)
妻 洋子
(53歳)

今は富山刑務所の木工専門の作業技官嘱託。刑務所のすぐ近くの職員官舎に住む。結婚15年。内向的で無口な人間。
妻の洋子は悪性リンパ腫で余命6ヶ月と宣告される。

塚本和夫
妻 久美子

倉島英二とは富山刑務所で再び一緒になる。塚本は富山刑務所の総務部長。社交的でおしゃべりなキャリア組、でも二人の相性は良かった。
30年前札幌刑務所勤務時代に倉島英二と初めて出会う。
妻の久美子と洋子は同い年で仲良し。

杉野輝元(61歳) 元女子校の国語の教師。女子高生の罠にはまり、教職を解雇される。刑務所で木工の虜になり、出所後就職するも疑いを掛けられ失職、放浪生活に。山頭火の句をこよなく愛する。

田宮佑司(36歳)
妻 美和

駅弁「イカめし」の実演販売で月の半分出張。有楽町の東京支社所属の課長。トップセールスマン。家を新築する。
南原慎一(51歳) 「イカめし」弁当作り、実演販売4年目。口べたで無愛想で不器用な男。父親はイカやトビウオを獲る漁師。

大浦卓也(28歳)
祖父 吾郎
(78歳)

長崎県平戸市のはずれ薄香漁港で祖父の手伝いをする。
両親は7年前荒れた海に出漁、帰らぬ人に。

濱崎奈緒子 大浦卓也の恋人で同い年。母親の多恵子の二人暮らしで唯一の食堂を営む。
読後感:

 どうも映画“幸せの黄色いハンカチ”をイメージしてしまって。本作品は映画“あなたへ”の脚本があって創作されたものとあるが、いかにも映画に適した展開と描写が感じられる。
 平凡な日常生活から、妻の遺言のような手紙から、長崎の薄香
(うすか)漁港に行って散骨を頼まれ、キャンピングカーで富山から長崎までの気ままな旅でいわくのある人達との出会いと運命のようなものを経験していく。

 映画ではおそらく周囲の景色、雰囲気が大いなる効果をもたらすと思われるが、小説ではもうひとつ盛り上りがものたりない印象である。逆に淡々と流れていく空気が好ましいのかも知れないが。映画の原案からの創作という言葉が大いにバイアスを掛けてしまったのかと。

 
余談:

 
覚え書き的に
・ 妻の座右の銘:
「他人と過去は変えられないけれど、自分と未来は変えられる」
「人生には賞味期限がない」 
・ 山頭火の句
「ひとりとなれば仰がるる空の青さかな」
「それもよかろう草が咲いてゐる」 
 背景画は、映画の「あなたへ」の一シーンを利用。