森絵都著 『リズム』、
               『ゴールド・フィッシュ』 




               
2011-09-25



(作品は、 森絵都著  『リズム』、 『ゴールド・フィッシュ』  講談社による。)

           
 

  『リズム』        1991年(平成年)5月刊行。
  『ゴールド・フィッシュ』 1991年(平成年)11月刊行。

 
 森 絵都:
 1968年東京生まれ。早稲田大学卒業。90年、「リズム」で第31回講談社児童文学新人賞を受賞しデビュー。同作品で第2回椋鳩十(むくはとじゅう)児童文学賞を受賞。「宇宙のみなしご」で第33回野間児童文芸新人賞を受賞。初めて児童文学の枠を超えて綴られた「永遠の出口」で第1回本屋大賞第4位に選出。「いつかパラソルの下で」で直木賞候補。あたたかくて力強く、深い作品世界は幅広い年代の読者に支持されている。
主な登場人物
<リズム>

藤井家
パパ、ママ

妹 さゆき(わたし)


お姉ちゃん:私立の「麗神学園」中学3年生。
私は近所の「若菜中」中学1年生、13才。
親戚の藤井家はだい二のわが家。

親戚の藤井家
おじちゃん、おばちゃん
長男 高志
次男 真治

高ちゃんは真面目。 真ちゃんはわるがき。でもわたしは真ちゃんが大好き。
高志は東京の大学に。
真治は高校に行かず、ガソリンスタンドで働き、好きなバンドに、そして新宿に引っ越すことに。

魚屋のおばさん
哲也(愛称 テツ)
妹 恵子

5年前に大きなスーパーが出来るも、商店街で魚屋を続けている。
テツは真ちゃんと小学校から同じクラス。 さゆきと同じクラス、弱虫で学校でも苛められている。

美砂 中学に入ってからの付き合い。 はじめは脳天気な子と思っていたが。
陽子 小学校からの親友。昔からバリバリのスポーツ少女。中学ではバスケ部に。
三木先生 さゆきのクラスの担任、国語の若い女の先生。
<ゴールド・フィッシュ> <リズム>からの変更点を中心に

藤井家
パパ、ママ
姉 みゆき
妹さゆき(わたし)
(主人公)

お姉ちゃん:高校2年生。
私は近所の「若菜中」中学3年生、15才。

親戚の藤井家
おじちゃん、おばちゃん
長男 高志
次男 真治

おじちゃんとおばちゃん、別居して2年。おじちゃん小岩井に住む。
高志は東京の大学生。裁判官を夢見ていたが、会社に就職を変更する。
真治は東京に出てバンドを組むも突然さゆきに連絡もなく居所を消す。

哲也(愛称 テツ) テツは中1の夏強くなると宣言し、確実に強くなっている。
大西先生 さゆきの中学2年、3年の担任。説教ばかり垂れるが、その実そうでもないことが判る。


物語の概要図書館の紹介文より

 『リズム』
 ガソリンスタンドで働きながらロックバンドで歌をうたう、いとこの真ちゃん。 そんなハデな真ちゃんに、まゆをひそめる人もいるけれど…。 小さいころから大すきだった真ちゃんの家族が、ばらばらになってしまうかもしれないと知った、さゆきは…。 第31回講談社児童文学新人賞。

 『ゴールド・フィッシュ』
 新宿へいってしまった真ちゃん、いつのまにか大人びてきたテツ、そして、高校受験をひかえ、ゆれるさゆき。 三人の〈リズム〉のゆくえは―。 好評 『リズム』 の続編。


読後感

 『リズム』

 不安定な年頃のさゆきを中心に据え、二つの藤井家、仲良しの美砂や陽子、テツとのことを通して小学校から中学校の変化、大好きな真ちゃんが東京に行ってしまうこと、おじちゃんとおばちゃんの離婚といった、不安を醸し出す変化に追いつこうとして戸惑ってしまう不安に涙したり、向かっていったりするさゆき。
 一見たくましそうに見えるさゆきであるが、真ちゃんも、テツもその弱さを見抜いていてそっと見守り、励ましていてくれる。
 三木先生のコスモスの花を持って届けに来てくれて、苛められていたテツのことのお礼やら、胸襟を開いて作文の嘘をつい白状してしまうさゆき。

『ゴールド・フィッシュ』

 あとがきによると、「リズム」は13歳のさゆきを描き、 「ゴールド・フィッシュ」 は 「リズム」 の続編として15歳のさゆきを描いたものとある。
 いずれの時代も将来の夢が大きなテーマとなるが、夢と実際に高校、大学に入って経験する実際はそう簡単なものでもなく、変更を余儀なくされる。 しかしさゆきにとっては大好きな真ちゃんの夢を応援し、実現が出来なくなっていく実情を知るにつけ涙しながらも周りの大人達のアドバイスを聞き、身近な友達の思いを感じながら、自分が描けなかった小さな夢をみつけ高校受験に臨む。

余談:

 小学生から中学生の思春期のとまどい、真っ直ぐに育って欲しい年頃の少年、少女たち。 そんな時代の心情の揺れを描写する著者の作品をもう少し読んでみたい。
 三浦しをんのエッセイ 「三四郎はそれから門を出た」 に沢山の作品の紹介と書評が載っている。 読書大好きの著者が記したもので、森絵都の「永遠の出口」の評がある。 “「この瞬間」を過ごすすべての人たちのために書かれている” とある、その作品をいつの日か読んでみよう。

背景画は「ゴールド・フィッシュ」の挿絵の金魚と藻の姿をイメージして。

                               

戻る