森絵都 『気分上々』



              2020-01-25


(作品は、森絵都著 『気分上々』    角川書店による。)
                  
          

  

収録 「ウエルカムの小部屋」 2000年11月「AIBO DREAM」講談社
   「彼女の彼の特別な日 彼の彼女の特別な日」2004年1月号「ダ・ヴィンチ」
   「17レボリューション」2006年4月号「野性時代」
   「本物の恋」2006年21、22号「non-no」
   「東のはつるところ」2009年12月「東と西1」小学館
   「本が失われた日、の翌日」2010年8月号「野性時代」
   「ブレノロール」2010年10月「チーズと塩と豆と」発行:ホーム社 発売:集英社
   「ヨハネスブルグのマフィア」2011年7月号「yom yom」
    「気分上々」2012年1月号「野性時代」

 本書 2012年(平成24年)2月刊行。

 森絵都:
(本書による)  

 1968年東京都生まれ。早稲田大学卒業。91年「リズム」で講談社児童文学新人賞を受賞しデビュー。同作品で椋鳩十児童文芸新人賞を受賞。「宇宙のみなしご」で野間児童文芸新人賞、産経児童出版文化賞ニッポン放送賞を受賞。「アーモンド入りチョコレートのワルツ」で路傍の石文学賞、「つきのふね」で野間児童文芸賞、「カラフル」で産経児童出版文化賞、「DIVE!!」で小学館児童出版文化賞を受賞。2006年「風に舞いあがるビニールシート」で第135回直木賞を受賞。近著に「ラン」「架空の球を追う」「この女」「異国のおじさんを伴う」などがある。

主な登場人物:

<ウエルカムの小部屋>
理想的な婚約者と別れ、自称発明家の夫と結婚。その結果は・・・。

<彼女の彼の特別な日彼の彼女の特別な日>

元彼の結婚式の帰りに、初めて一人でバーに。そこで出会った男。
祖母の49日会食の帰りに初めて一人でバーに。そこで僕が初めて女性に声をかけた。

<17レボリューション>
倉本千春=あたし 17才の誕生日、自分革命を目指し、大親友のイズモと1年間の絶交を申し入れる。
イズモ 観察眼の鋭い、人のことを批評させたら天下一品。こっちが弱っている時には妙に親身になってくれたりの、いぶし銀みたいな味のある女。
真野信輔 地味で不器用で影の薄いが、千春は一緒に居て疲れない相手。
<本物の恋>
8年前17歳。かわら祭り、新天橋で出会った彼に、8年後再び出会う。
彼が新天橋で見ていたカップルの女性は、彼が本物の恋をしていた相手。
中西 17歳の時、かわら祭りに私にダブルデートを企んだ彼。
<東の果てるところ>
草間由香 岡山県會田天門市で左右対称の名前が強運とする草間一族に反発し、18才の春故郷を立つ。美しい容姿故に芸能界入り。
文音(あやね) 草間の姓を捨てゼロ対称の郵便局員(勇治)さんと共に會田天門を去ったいとこ、由香より4つ年上。
<本が失われた日の翌日> この世から本が消えた。
<ブレノワール> ブレとは小麦粉。ノワールとは黒色。黒麦のことを表す。

ジャン=僕
母親 アネット
父親 ルネ(没)

ブルターニュ出身のブルトン人。村を出てパリの二つ星レストランで修行。ブルターニュに戻る。
・ブルトン人は信心深く、厳格なルールに則る生活をする。
 ルネが僕が物心着く前に落雷で亡くなり、アネットは僕を連れローラン伯父を頼って親戚のバロー家に身を寄せる。

サラ ブルターニュ出身、僕の結婚の相手。
<ヨハネスブルグのマフィア>
石川=わたし 40才を前に失業中。ツアー旅行でタンザニアと南アフリカのツアーに。黄熱病の予防接種受けに東京港湾合同庁舎で彼と知り合うい惹かれる。
アフリカ大陸を中心に貿易の仕事。
<気分上々>

柊也(しゅうや)=オレ
親父

頑固一徹の職人気質の親父の言葉「男は黙して語らず」「背中でものを言う」に育てられたオレ。
依林(イーリン) 小1から、クラスから離れたことなしの好みの彼女。
同じクラス、教室でデカいツラ。この頃依林とよく話をしている。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 「自分革命」を起こすべく親友との縁を切った女子高生、家系に伝わる理不尽な“掟”に苦悩する有名女優、無銭飲食の罪を着せられた中2男子…。森絵都の魅力をすべて凝縮した、多彩な9つの物語。

読後感:

 9つの短編小説、数ページで終わるものもあるが、中でも面白かったのが

 <17レボリューション>
 “自分革命”と称し、大の仲良しのイズモと1年間の絶交を告げ、付き合う相手を今までは“なんとなく好きで選んでいたのを“イキがいいか、悪いか”で選ぶことに。その結果は・・・。10年前に離婚し、年に数回は会っているパパに訪ねたら「やっぱり人間は客観的な価値基準に基づいて生きるだけじゃ幸せになりえない、ってのが僕の結論かな」「一緒にいて、居心地がよかったら、それでいいんじゃないか」と。

 <本物の恋>
 かわら祭りの日に、ダブルデイトを企む中西に反発、自分も作戦開始。実際に一人にされた時に心境変化。ふと新天橋の元で見かけた一組のカップルとその姿をじっと見つめている男の人。その後の展開は実に本物の恋とはこういうものかと思わせる憎さが。

 <気分上々>
 親父の言葉に支配され好きな女の子に冷たくされていると感じるオレ。依林が翼と仲良くしているのではないか、でも無銭飲食の罪をかぶせられたオレは依林に、翼は辞めといた方がいいよと言っても素直に聞き入れてくれないかもと悩むオレ。でも、真実は・・・。これは気分上々。


余談:

 実に色々なシーンの出来事が語られていて、幅広い分野に才能があるんだなあと思わせる。その名事を感じていて、あとがきを見た。
 デビューから20年が流れ、このたび、これまであちこちで書いてきた短編小説を一冊にまとめていただくことになりましたと。
 その背景を補足する内容が記されていた。と言うことで出版社側からお題の依頼があり、その趣旨に沿って生み出されたようだ。なるほど、でもそれを満足させるものに仕上げるのって、やはり能力でしょ。

背景画は、自然いっぱいの素材集がErrorとなって消失してしまったので、背景素材無料のものからに。

           
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