森 敦 著 『月山』




                 
2008-07-25





(作品は、森敦著 『月山』  河出書房新社による。)


               

発表誌 季刊芸術 昭和48年夏季号(第26号) 芥川賞受賞作品。
本書 昭和49年(1974年)8月初版発行。

 
読後感:

 本の帯に“自らに沈黙と流浪の人生を課した不羈(ふき)の魂が、四十年の犀星を経て<死の山>月山の淵源(えんげん)に刻み上げた稀有の名篇”とある。
 また小島信夫氏の解説「月山」には、上古より<死者の行く山>と畏れられる出羽の霊山・月山。その山ふところの破れ寺に、ある夏、何者とも知れぬ男が辿りつく。男は雪に埋もれた長い冬に耐え春の終りと共に再びいずこかに去っていくが・・・
 読者はこの男と共に、閉ざされた山間の村人の土俗の暮らしに浸りながら、いつしか此の世ならぬ幽冥の世界に誘い出され、生と死の淵源をさまよい歩く―――稀有の名篇として絶賛をあびる受賞作「月山」 とある。

 そんなことを読んだ後で観た。それはさておき、読もうとしたきっかけは、新井満のエッセイ「死んだら風に生まれかわる」
そして月山という名に惹かれ、NHK教育TV趣味悠々「奥の細道を歩く」で俳人の黛まどかさんとスケッチ水彩画を趣味にする俳優の榎木孝明さんが月山に登った時のミネザクラ、頂上の社が印象に残っていたから。この小説の読み出しもそんな思いが自然にすっと入ってきて好ましかった。

 月山にまつわる説明を読み進んでいる内に次第に深山に向かう自分があるようで、主人公の私が体験するままに気分は現世を離れてそんな世界に入り込んでいくようであった。その中では村の素朴な生活の中で、実に恐ろしく気味の悪い記述が一瞬出て来る。しかもさらっと通り過ぎてしまうのであるが、頭の隅にその気味の悪さがずっと残ってしまって、なんとも不思議な気持ちにされてしまう不思議な小説である。

 再度年を経て読んでみたい小説である。
「月山」に関して理解のポイントとか、この作品が生まれた背景、著者の意図といったことは新井満のエッセイに森敦の言葉であったり、新井満の見方であったりして、記されているので参考になる。
エッセイについては後日改めて取り上げて、「月山」のこと、作家森敦について取り上げたい。


   


余談1:

 森敦の作品はなかなか難解? 今読んでいる「われ逝くもののごとく」は「月山」と向かい合う鳥海山に関係するものだが、なかなか現実の話なのか、夢の中の話なのか、そんな戸惑う世界に身を置いている。
 でも止められないのは、どういうものか? やっぱり荒井満と森敦が対談しているエッセイを見てみないと書けないなあ・・。

 はたしてこの作品取り上げることができるかな? 
背景画は、月山の風景(HPより)。

                               

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