水生大海 『冷たい手』



              2021-02-25


(作品は、水生大海著 『冷たい手』    光文社による。)
                  
          

 初出 2015年4月 光文社刊。
 本書 2019年(平成31年)3月刊行。

 水生大海
(みずき・ひろみ)(本書より)  

 三重県生まれ。教育系出版社勤務後、派遣社員に。一九九五年に秋田書店より漫画家デビュー。2005年に第1回チュンソフト小説大賞(ミステリー/ホラー部門)銅賞受賞。’08年に「少女たちの羅針盤」で島田荘司選 第1回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞優秀作を受賞し、翌年デビュー。続編に「かいぶつのまち」(光文社)、「ひよっこ社労士のヒナコ」(文藝春秋)、「僕はいつも巻きこまれる」(講談社タイガ)などがある。 

主な登場人物:

国枝朱里(あかり)31歳

アヴァンタイトル勤務の契約社員、31歳。
人付き合いが悪い、刹那的印象を持たれている。

秋葉典子(のりこ)32歳 園では評判の保育士。朱里とは20年前の秘密を共有していて、1年に一度程度会っている。室町延兼の息子翼(5歳)に懐かれている。
アヴァンタイトルの従業員

ホワイティグループが運営する中価格帯のブランドコンセプト。
ショッピングモール「ビバルディ」の国分寺にある。
・道長 エリアマネージャー。
・細川 1年前新店長として、ホワイティグループのただ一人の正社員。
・林、定岡 同僚

室町延兼(のぶかね) アパレルの会社、室町紡績の若社長。妻を亡くし5歳の息子がいる。秋葉典子と結婚する話がある。
山本仁菜(ニイナ) MUROMACHIのモデル。典子に室町を横取りされたと騒ぐ。
眞沢憲吾 警視庁捜査一課第十四係巡査部長。4月に配属されたばかり。
田中ゆきこ 憲吾が付き合っている女性。インターネットの書き込みに対するチェックの仕事。寂しがり屋、芯の強さを持つ。
捜査本部関係者

・角田警視庁捜査一課長
・北見管理官
・倉科係長 警視庁殺人犯捜査第十四係

板橋署 原田巡査部長 48歳。捜査本部で眞沢の相方。
鳥居丸美 朱里が静岡の父方の祖父母の家に預けられていた時小学校で仲の良かった子。朱里と別れるとき森林公園に二人で行ったときの出来事(二十年前の出来事)があとあとの殺人事件の要因に?

鳥居周作
妻 美雪

丸美の父親。元暴力団員。
・美雪 子宮癌で亡くなる。
◇子どもたち
・長女 生後1.5年でなくなる。
・二女 丸美
・三女 幸子
(さちこ)父親を嫌い分籍、現在29歳。

新庄知一(ともかず) 丸美、朱里、典子監禁の犯人。鳥居周作に殺害される。
立花十造 探偵業、55歳。
寒川先生

三島市の病院の医師。出所した鳥居周作を特別養護老人ホームに世話をした篤志家。寒川は鳥居周作に命を助けられたことがある。
・娘 可南子 中学時代家庭教師との間に子どもをなし、親が養子に出す。

浅賀 ビバルディの社員食堂に現れ、朱里に何かと親切なおばさん。アヴァンタイトルにも出入りし、情報屋的人物。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 「私たちは、幸せになってはいけない」。ふたりの女性が抱えるものとは。過去の呪縛が現在の幸せを無残に引き裂くのか。息を潜めて生きるひとりの女性に、連続殺人犯の影が忍び寄る…。迫真のサスペンスミステリー。

読後感:

 国枝朱里と秋葉典子には、20年前の何か秘密がありそうなのが物語の節々に現れていて、それがどういうものなのか、読者は途中から知ることに。
 その間に秋葉典子は室町延兼社長との結婚話に、モデルのニイナがテレビで激しく攻撃をし、典子は断ることになる。そんな中、典子が駅の階段から転落、救急車で運ばれたと朱里に連絡が入る。意識が戻り自宅に戻ったが、警察から頸部圧迫で死亡の報が朱里に知らされる。

 又、ネットのアングラサイトには典子のことが暴露されていることを知り、朱里は何故殺されたのか、自分も狙われるのではと不安がよぎる。

 一方、警察の動きが眞沢憲吾と所轄のベテラン刑事原田のコンビが執拗に朱里につきまとってくる。朱里は勤務先では同僚や上司に嫌みや噂話にさいなまれ、警察にはつきまとわれ不安がつきない。
 若い刑事の憲吾は原田にいいように使われ腐るも、付き合っている田中まゆみとのやり取りで何とか心の平穏を保っている。

 20年前の事件が明るみに出るのと、典子を脅していた探偵の死体が出るとホンボシの一人に朱里が注目され 憲吾たちに張り込みの役が。
 しかし意外なところから憲吾は自分が付き合っている田中ゆきこに対して疑念が浮かび上がってきた。

 捜査を外された憲吾が一人独断で丸美の小学校を訪れたどり着く真実、朱里が犯人と思われる人物を感じだしそして襲われるシーンで真相が明らかに。
 凝った作りと次第に明らかになっていく真実、複雑なストーリーに読者はやっとたどり着けた感じがした。


余談:

 朱里は板橋署の原田巡査部長の挑発的な言動、苛立ちを覚える言葉に、次第に何が何だか判らなくなっていく思いを抱くも、反論して自分を失わないよう振る舞うが、この様子を見ていると警察という組織の恐ろしさを感じてしまう。
 相方としての憲吾は警視庁の人間で、普通は、主体は警視庁側にあるが、新米と言うことで、自分が事件の主戦場にいることを欲している所轄のベテラン刑事の振る舞いに、異論を持っていてもいいように扱われてしまっているのは致し方ないところ。 

背景画は、自然いっぱいの素材集がErrorとなって消失してしまったので、背景素材無料のものからに。

           
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