三好昌子著 『空蝉の夢』



              2018-05-25


(作品は、三好昌子著 『空蝉の夢』    宝島社による。)

          

 
  本書 2017年(平成29年)9月刊行。 

 三好昌子:
(本書より)
 
 1958年、岡山県生まれ。大阪府在住。嵯峨美術短期大学洋画専攻科卒。第15回「このミステリーがすごい」大賞にて「京の縁結び 縁見屋の娘」で優秀賞を受賞し、2017年デビュー。
(本作品は2作目)
     

主な登場人物:

月夜乃行馬
(つきよの・いくま)戯作者の名前
本名 御刀屋清一郎

出身は美作国、故あって追放され国を出る。
名を捨て京で上田秋成の紹介で「満天堂書林」の要請で寺小屋の師匠に。堀川に家、傍ら都の名所を紹介した案内本を書く。
御刀屋家の家宝の”般若刀”を持つ。

満天堂書林の人々

・主人 豊吉
・息子の吉太郎 豊吉の後を継ぐ。弱腰の若旦那。
・女中 おぶん 旅一座から豊吉に気に入られ引き取られる。「満天堂」で下働きをしながら、行馬の世話をする。
・春次 長年版木の摺師の老職人。

刈谷冬芽(かりや・とうが)
本名 緋沙

高級料亭「若狭屋」の娘。人嫌いの女絵師。
佐吉

高級料亭「若狭屋」の主人。先代の作次郎により京に呼び寄せられ、娘の緋沙と一緒にして店を継がせるものと。
ところが佐吉は大旦那(作次郎)の実の息子だった。

小林順吾 儒学者の起こした塾「古義堂」の門人。満天堂の二階の寺小屋で手習いを教えている学者。
美作国津山領の人々

・四代目領主 松平長孝(ながたか)
・国家老 津鷹惣五郎
(つだか・そうごろう)
     父親は津鷹惣右衛門(三代目松平長の付き人)
・勘定奉行 佐々木三郎右衛門 あらゆる権限が彼に許される。
 一揆を撲滅するため刺客「死手組」を組織する。
◇「死手組」のメンバー(下士身分で腕の立つ5人)
・御刀屋清一郎(組頭)25歳
・横田源之丞25歳
・赤松大悟23歳
・木村信右衛門16歳
・門田与五郎20歳
・五代目領主 松平康到
(やすむね)

八重

津鷹惣五郎の娘。御刀屋清一郎と恋仲だったが、身分の違い、「死手組」の追放により、別れる。

おぶん
正式名 文

中原村の庄屋宗郷太一郎の娘。故あって庄屋が襲われたとき命を助けられ旅の一座に拾われ、その後「満天堂」の豊吉に引き取られる。

岸田松庵(しょうあん) おぶんの兄松次郎。今の名は医者で松庵と名乗る。
津村信右衛門 おぶんのいい人。

補足:”般若刀” 御刀屋家に伝わる刀匠鬼佐次の打った真に美しい家宝の刀。刀身の片側には般若心経の最初の八文字が彫り込まれている。それは切れない刀でもあった。

物語の概要:(図書館の紹介記事より。)

 侍としての名と過去を捨て、京で暮らす戯作者・月夜乃行馬。懇意にする板元の満天堂書林で京の名所図会を執筆する行馬は、女絵師の冬芽が描く、哀しき想いを秘めた絵に惹かれていく。だが同じ頃、行馬が持っているはずの妖刀を振るう辻斬りの報せが…。  

読後感:

 時代小説は久しぶりである。主人公月夜乃行馬は4年ほどの旅暮らしの後腰を落ち着かせたいと考えていた矢先、油問屋の主人で草紙を書いているという男と出会いその男の紹介で京の「満天堂書林」の主人の世話で寺小屋の師匠となる。そして傍ら京の都の名所を紹介した案内本を書く。
 ということから風流な読み物かと思いきや、時にミステリアスな展開を遂げていく。
 恋あり、絵草紙にまつわる人情あり、友情あり、殺人あり、国元の陰謀ありと物語の展開もてきぱきしていて引き込まれて読める。
 
余談:

 花木の名前が出ているが、難しい漢字に見取れる。
・満天星躑躅(どうだんつつじ)
・杜若(かきつばた)
・百日紅(さるすべり)
・藤蔓(ふじづる)

背景画は、森・木をテーマに。(自然いっぱいの素材集より)

           
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