<主な登場人物>
須川美花
母親 冨美
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京都の川村呉服店勤務。出身は島根県の海沿いの岬に実家。母は40歳でなくなり、祖母がひとり住んでいたが危篤に(80歳)。 |
町田茂樹
父親 貞夫
母親 喜代
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土木建設の中でも掘削を専門にする会社に勤務。32歳の時、結婚2年で妻に先立たれ、翌年母親を亡くす。
10歳の時初めて美花(3歳)に会い、15歳の時父から美花と兄妹と知らされる。
会社からフランクフルト行きを打診される。
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川村文造 |
川村呉服店の社長。須川美花を高くかっている。
滝沢宗一郎とどこかでつながっている?
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滝沢宗一郎 |
(株)タキザワの社長。須川美花名義の口座に毎月お金を振り込んでいた。
・兄 宗近。皆生(かいけ)温泉の浜で焼身自殺。美花の父親らしいという噂。
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瀬島和子 |
美花にとって高校の1年先輩。東京の信用金庫に勤めていたと言うも・・。首つり自殺する。 |
土屋 |
境港の網元の次男。高校を退学、東京の築地に預けられる。
美花のことが好きだった。美花が岬の家に戻る話を聞き、就職先の口利きをする。
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岡崎 |
町田茂樹の勤める会社の2年先輩。西口と親しい。 |
西口 |
同性愛者と言うことで退社、半年後離婚。
岡崎と西口ら4人で北海道にカヌーの練習キャンプに茂樹と美花参加する。
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<物語の概要>(図書館の紹介記事より)
(上)
島根県の岬の町に住む美花は、茂樹の異母妹である。幼い頃、岬の家に行くのが茂樹は好きだった。いつも二人は焚火を楽しんだ。父が死に、母も他界した後、茂樹は母のノートから「許すという刑罰」との謎のメモを発見する。一方、美花の家には異様な写真が一枚残されていた。「美花は本当に自分の妹だろうか」出生の秘密を探るうち、さらに強まる二人の絆。それは恐ろしいほどの疼きとなった。
(下)
蠱惑の極みの陶酔…異母妹?!美花はもう、茂樹のすべてだった。罪悪感が、二人の果てなき愉悦の火種となった。フランクフルトへの転勤を前に、茂樹は辞職を決意する。生活の糧とすべく、二人は岬の家の近くに廃屋同然のかやぶき農家を移築して改装し、旅館業を営む決意を固めた。準備をすすめる中、美花は自分の出生の謎を記した茶封筒を手にする…。
<読後感>
茂樹の父は“美花が自分の娘であることは母がこの世から姿を消すまで誰にも口外してはならない”“このことを誰かに喋ったら、ぎょうさんの人が不幸にこそなれ、誰ひとり、得をする人間も、幸福になる人間もおらんのや”と。そして美花の母親からも茂樹と美花が兄妹あることを打ち明けられた。
さらに茂樹の母親の遺品から母のノートに<許す>、<許すという刑罰>と言う言葉を、そして男の字で書かれた葉書に<どうか、お許し下さい>の文字を見つける。
さらには美花の差し出した写真に生後7,8ヶ月の女の子を抱いた首から上のない男と美花の母、茂樹の父と母が写っている。全編謎に包まれた第一章の出だしでなんだかミステリーの様相。
そんな中、かわされるやりとりには茂樹と美花の仲の良さと共にホモとか男色系とかのアブノーマルな雰囲気や焼身自殺とか電車に飛び込み自殺などが飛び出してきて著者の意図がどこにあるのかなあと思ったり。
とはいえ宮本輝という作家のことは今まで色々読んできて人となりを多少は分かっているのでいやな気もせずに読める。
作品の中には種々の読者に問題提起や訴える話題、参考になる題材があり、やはり為になるところは変わらない。
ミステリーのラストは・・、美花も茂樹もお互いを思い、世間というものに対して揺るがされることなく自分たちの生き方を貫くことで岬の家とのたちきりを選び、周りの友の理解や協力を得て新しい一歩を踏み出すことに。
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