物語の概要:図書館の紹介より
御成婚や安保に沸く昭和30年代。松坂熊吾の駐車場経営は軌道に乗り、息子伸仁が思春期を迎える中、数々の因縁があった海老原太一が自殺…。戦後の時代相を背景に作者自らの“父と子”を描くライフワーク。
読後感:
4年(?)ぶりの「流転の海」第6部を手にした。第3部(?)あたりから毎年発売から4〜5年置きの刊行となりすっかり今までのいきさつがうろ覚え状態で読むことになる。この作品、宮本輝のライフワーク作品となるべく父親と息子(二十歳になるまで)の物語を主題にその生き様を描くのがテーマであるごとく、今回は息子の伸仁が中学入学から2年生にまでの成長ぶりが描かれている。ということは20歳の時を迎えるまでにはまだまだ時間が掛かりそうである。はたして熊吾(現在63歳が70歳に)が生きているのか、こちらが生きているのか?
松坂熊吾の親父ぶりはあいかわらず時代の変遷にともない時流に乗る能力に長けてはいるが運が味方するときはいいが落ち目の時は地道に商売をすることを妻の房江は望むものの熊吾はさらに危険と思えるような大きな一か八かの勝負に走る性格は変わらず。
息子の伸仁はそんな父親から世渡りのうまさを身につけたくましさは見られるものの、虚弱体質を心配する両親の心配はつきない。
伸仁の気の利かしかたには愛すべき所も多々あり、どういう大人に成長していくのやら今後の展開に期待される。
そして時が経っていく中では死がつねに生ずる。浦辺ヨネ、香根、海老原太一、そして亀井周一郎は癌に倒れる。
人生の悲哀を感じる。
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