宮部みゆき著

                         
『ソロモンの偽証』
            
(第V部 法廷)




                 2013-05-25


  (作品は、宮部みゆき著 『ソロモンの偽証』 第V部 法廷   新潮社)による。)

             
  

 初出 「小説新潮」(2009年9月号〜2011年11月号)
 本書 2012年(平成24年)10月刊行。

宮部みゆき:

 1960年、東京生まれ。‘87年「我らが隣人の犯罪」でオール読物推理小説新人賞を受賞。’89年「魔術はささやく」で日本推理サスペンス大賞を受賞。‘99年には「理由」で直木賞、2001年「模倣犯で」毎日出版文化賞特別賞、’02年には司馬遼太郎賞、芸術選奨文部科学大臣賞(文学部門)。その他多数の受賞作品がある。他の作品には「ぼんくら」「楽園」「小暮写真館」「おまえさん」など多数。

物語の概要:図書館の紹介記事より

第V部 法廷

事件の封印が次々と解かれていく。私たちは真実に一歩ずつ近づいているはずだ。けれど何かがおかしい。とんでもないところへ、誘き寄せられているのではないか。この裁判は仕組まれていたのか…。驚天動地の完結篇。

主な登場人物:
 
裁判の当事者、証人の順番リストで

<裁判関係者>

判事
助手

・井上康夫 城東第三中学校3年A組
・野田健一

検事側
事務官(2名)

・藤野涼子 城東第三中学校3年A組
・佐々木吾郎
・森尾一美

弁護側
助手

・神原和彦 東都大学付属中学3年生
・野田健一

被告人 ・大出俊次
廷吏 ・山崎晋吾 (空手一家で初段)
陪審員(9人)

・竹田和利、向坂行夫、小山田修、倉田まり子
・山埜かなめ、勝木恵子、浦田教子、原田仁志、溝口弥生

証人たち

<第一日目>
検事による争点と起訴説明。
・楠山恭一先生(社会科の先生。遺体発見時の証言。)
・野田健一(第一発見者)
・津崎正男(元校長先生)
・土橋雪子(1年の時柏木卓也と同じクラス)
・柏木則之(柏木卓也の父親)
・茂木悦男(HBSの記者)
・柏木宏之(柏木卓也の兄)
・柏木則之(柏木卓也の父親)
<第2日目>
・佐々木礼子(城東署少年科の刑事)
・井口充
(みつる)(大出のワル三人組の一人)
・楠山教諭(補足で)
・丹野先生(美術の先生)
・小玉由利(HBの報道局で働く派遣社員)
<第3日目> 非公開
・三宅樹理(告発状の作成者)
・橋田祐太朗(大出のワル三人組の一人)
・垣内美奈絵(森内先生のマンションの隣の部屋の住人)
<第4日目>
・増井望(4中の生徒、大出らによる強盗傷害事件の被害者)
・今野努(弁護士 大出家の放火に関する事件の関係者)
・大出俊次(ワル三人組のボス的存在)
<第5日目 最終日>
・滝沢卓(すぐる)(学習塾の経営者)
・小林修造(電器店の店主)
・意外な人物

読後感

◇第V部 法廷

 いよいよ柏木卓也の自殺か殺人かの学校内裁判が始まる。真実はどういうことか、そして中学生の裁判ではたしてうまく運ぶのか、どんな結末が用意されているのか。

 第1部、第2部で明らかにされたことが整理されて裁判の中で描写されるが、特に不明であった大出俊次、井口充、三宅樹理の証人尋問がどのようなものになるのか。
 進んでいく中で、佐々木礼子の視点での描写、廷吏の山崎晋吾の視点、倉田まり子の視点野田健一の視点と登場人物としては陰の存在的な人物ではあるが、そちらからの感じたこと、心情等が記述されて、人物像を浮かび上がらせると共に、著者の非常に温かな眼がそこそこに見て取れる。

 なにかこの作品、今まで経験しなかったような感情移入が起こってしまい、この長編も何の苦もなくどんどん読み進んでしまった。
 結審に近づく前、最終日の検事側からの新たな3人の証人の尋問で意外な展開に今までに所々で伏線として表れていたものが現実のものとして暴露される。
 その後の集結はどうなるのかと益々引き込まれる。

 評議での議論の中で今まで気になっていた証人の発言だけ、物証が何もないのが気になっていたがやっとそれらしきものが出て最終判断が導き出されるのはその通りだと納得。
 この長い小説も漸く終了して関係者の大いなる成長がなされたことだろう。


 学校内裁判における人物相関図。
余談:
 
 大人に出来なかったことをここまで中学生の生徒達が成し遂げる、こんなことって本当に起こりうるのだろうかという素朴な疑問が残った。
 
 背景画は物語の中心、少し古い時代の中学校の校舎をイメージして。 

                    

                          

戻る