読後感:
◇第V部 法廷
いよいよ柏木卓也の自殺か殺人かの学校内裁判が始まる。真実はどういうことか、そして中学生の裁判ではたしてうまく運ぶのか、どんな結末が用意されているのか。
第1部、第2部で明らかにされたことが整理されて裁判の中で描写されるが、特に不明であった大出俊次、井口充、三宅樹理の証人尋問がどのようなものになるのか。
進んでいく中で、佐々木礼子の視点での描写、廷吏の山崎晋吾の視点、倉田まり子の視点野田健一の視点と登場人物としては陰の存在的な人物ではあるが、そちらからの感じたこと、心情等が記述されて、人物像を浮かび上がらせると共に、著者の非常に温かな眼がそこそこに見て取れる。
なにかこの作品、今まで経験しなかったような感情移入が起こってしまい、この長編も何の苦もなくどんどん読み進んでしまった。
結審に近づく前、最終日の検事側からの新たな3人の証人の尋問で意外な展開に今までに所々で伏線として表れていたものが現実のものとして暴露される。
その後の集結はどうなるのかと益々引き込まれる。
評議での議論の中で今まで気になっていた証人の発言だけ、物証が何もないのが気になっていたがやっとそれらしきものが出て最終判断が導き出されるのはその通りだと納得。
この長い小説も漸く終了して関係者の大いなる成長がなされたことだろう。
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