読後感:
宮部みゆきに関しては昔最初に読んだ「模倣犯」の印象が深かったので、この作品は何ともまともすぎて違和感を持った。
内容はミステリー調であるが、今多コンツェルンの娘婿となった私(杉村三郎)とその妻菜穂子と桃子という一人娘の家庭、会長の週末だけの個人運転手である梶田氏のひき逃げ事件を巡りその犯人捜しに関連し、二人の娘(聡美、梨子)との関わり、娘婿であるが故(?)のコンツエルンの社内報の編集を担当している立場を巡る日常的な生活ドラマの展開が面白い。
聡美と梨子の対照的な性格が終末で意外な展開を果たすが、それまでは対比的で面白いし、私(杉村三郎)の存在も控えめでごく玉の輿の婿さん風の雰囲気が良く出ていて和む。
梶田氏のタクシー運転手になる前の隠された面も、聡美の何かと悪い方に思いやる性格も何か不安感を持たせていて読み手を引き込ませる。
作品は重苦しいものを感じさせないでそれなりに興味深く読める内容で、荒唐無稽的な内容でなく、現実味を帯びたちょっと世の中を知るのに参考となる物語である。
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