宮部みゆき著 『 誰か 』




                  2009-10-25



  (作品は、宮部みゆき著 『 誰か 』     実業之日本社による。)

                  
 

 2003年11月刊行

宮部みゆき:

 1960年東京都生まれ。法律事務所勤務ののち小説家に。87年「我らが隣人の犯罪」でデビュー。89年「魔術はささやく」で日本推理サスペンス大賞、92年「龍は眠る」で日本推理作家協会賞、99年「理由」で直木賞を受賞する。また01年「模倣犯」がベストセラーとなり話題となる。

物語の展開:

 今多コンツェルンの会長の個人運転手として長く勤めてきた梶田氏が、ある日とあるマンションの前で自転車にひき逃げされる事件で亡くなり、犯人は逃げたままでなかなか現れない。 梶田姉妹の父の伝記を出版して犯人に反省を促したいとの要望で、会長からの紹介で私が手助けをすることになる。

主な登場人物:

杉村三郎=私
妻 菜穂子
娘 桃子(4歳)
今多コンツェルンの会長の娘を妻にし、本社別館でグループ広報室で社内広報誌の編集を担当するサラリーマン(35歳)。
妻の菜穂子は、会長の妾の子(29歳)。
今多嘉親 今多コンツェルンの会長(79歳)。
梶田信夫
娘姉妹
 聡美(32歳)
 梨子(22歳)
タクシー会社から独立し、個人タクシーに。 そして週末は今多会長の個人運転手として信頼される人物。 タクシー会社に勤める以前のことはいろいろある。
聡美と梨子は年も離れているし、性格的にも大変違っている。 そして互いに対抗意識が潜んでいる仲でもある。
浜田利和 梶田聡美の婚約者。
野瀬祐子 梶田氏がタクシー会社に勤める以前にいたトモノ玩具店に半年ほどいて梶田氏と同時期に辞めた若い女性。

読後感

 宮部みゆきに関しては昔最初に読んだ「模倣犯」の印象が深かったので、この作品は何ともまともすぎて違和感を持った。
 
 内容はミステリー調であるが、今多コンツェルンの娘婿となった私(杉村三郎)とその妻菜穂子と桃子という一人娘の家庭、会長の週末だけの個人運転手である梶田氏のひき逃げ事件を巡りその犯人捜しに関連し、二人の娘(聡美、梨子)との関わり、娘婿であるが故(?)のコンツエルンの社内報の編集を担当している立場を巡る日常的な生活ドラマの展開が面白い。

 聡美と梨子の対照的な性格が終末で意外な展開を果たすが、それまでは対比的で面白いし、私(杉村三郎)の存在も控えめでごく玉の輿の婿さん風の雰囲気が良く出ていて和む。
 梶田氏のタクシー運転手になる前の隠された面も、聡美の何かと悪い方に思いやる性格も何か不安感を持たせていて読み手を引き込ませる。

 作品は重苦しいものを感じさせないでそれなりに興味深く読める内容で、荒唐無稽的な内容でなく、現実味を帯びたちょっと世の中を知るのに参考となる物語である。


余談1:
 今並行してロジェ・マルタン・デュ・ガールの「チボー家の人々」を読んでいる。大河ドラマで非常な長編もので時間がかかっている。そんな時は一方で肩の凝らない小説をパラに読むのが愉しい。
 背景画は作品の表紙の画を利用。 

                    

                          

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